80歳を超えて よりよい人生を送る人(1/2)

2023/7/10

80歳を超えて よりよい人生を送る人(1/2)

 北村弘之  

私は55歳で会社員生活にピリオドを打ち、現在セカンドライフを自分なりの想いをもって送っています。セカンドライフを過ごすにあたり、心身ともに元気でいるには「何か継続して打ち込める」ものをもつということを目指しました。そして始めたのが、高齢で判断能力の乏しい人のための後見人の仕事と50歳代を中心とした企業等向けのライフプランセミナーの講師です。私にとっては、これら二つはこれまでの経験のない新しい課題ですが、どのように解決するかが仕事の面白味になっています。私自身としては仕事というより、人生を愉しむ想いで担当させていただいています。

その礎になっているのは、「社会勉強」です。この社会勉強とは、座学では得ることのできない人との交流の中で醸成されるものと考えています。交流の場で話を聴く、またその人の想いやその人の振舞い(行動)に触れることです。とりわけ先輩との交流から知識や知恵、そして「刺激」を受けています。

私が刺激を受けている先輩の多くは、身体的には何かしらの医療ケアを受けているものの、前向きに健康的に過ごされています。この方々には次のような共通な行動や考えがあるように思えます。

・過去にはこだわらない

・今、熱中できることがある

・できるだけ、人と交流する機会を楽しみたい

・何か人の役に立ちたいと思う

それでは、私に刺激を与え続けている80歳前後の人を紹介します。

【過去にはこだわらない人】

定年後に、現役時代の会社名や役職を語る人を時々見かけますが、よりよい人生を送っている人は、現役時代に成してきたことを「糧」として現在はエネルギーに変えて活躍しているように思えます。セカンドライフで現役時代の会社名や役職名を話すことは、過去の栄光なのでしょうが仲間として一緒に何か行うには支障があるようです。

Mさん(推定84歳)とは、私がセカンドライフを歩んだ時に知り合った人で、その後何回かお会いして話を聞かせていただいたところ、大手企業の人事部長職にあった際、会社始まって以来の従業員のリストラを担当することになったようで、その時は大変苦痛を味わったそうです。そのようなこともあって本人も会社を辞め、まったく畑の違う仕事として、家裁の調停員、高齢者向けのセミナー講師、そして地元ではボランティア活動を行うようになりました。当時は会社員生活との違いに驚いたそうです。令和4年には約30年近く続くボランティア活動により大臣表彰を受けたとの手紙が今春私の手元に届きました。

Iさん(81歳)は、元商社マンでありながら、家族のことは語っても商社時代の経験談を語ることは一切ありません。話には、これまでの人生で得た経験や知識、知恵を具現化そして表現されている姿があります。その姿が現在、NPO法人の理事長として高齢者の集団を引っ張っているのです。また定期的に発行している機関誌の巻頭内容は私にとって有意義なもので楽しみの一つになっています。現在の住処は、グループリビングというところで10名の仲間と共同生活をされており、一緒にバス旅行などを企画して楽しんでいます。

【今 熱中できることがある】

私は子どもだった昭和30年代は石川県小松市の小さな町で過ごし、遊びは上・下級生とともに神社の敷地内でビー玉をしたり、また稲刈り後の田んぼを利用して野球をしたりと、とにかく遊びに熱中していました。それが、会社で働くようになると、組織としての仕事に熱中するようになり、知らないことへの挑戦と興味が自身を成長させ、そこに大変さ(ストレス)が加わりました。そして活躍度が点数で評価されることになり心が折れることもありました。しかしセカンドライフでは自分の想いを実現できる時間を持つことができるようになりました。また子供時代の夢の実現ができる時間になったのです。

Kさん(78歳)とは、会社員時代に異業種でしたが同じ職種であったことから、企業間のプロジェクトに参加し知り合い、そのメンバーとして同じ目標に向かい研鑽してきました。仕事の研鑽もありましたが、そのメンバーのおかげで私はゴルフを覚えたのです。Kさんの平成31年の年賀状には、ゴルフのスコアは下降気味ですが、足掛け9年で高尾山健康登山を2,100回に達したとありました。年間200回強になります。まさに高尾山に取りつかれたかのような熱中ぶりです。あれから5年。今も登り続けているのでしょう。

Uさん(81歳)は、私に社会福祉士の職種の道を示してくれた人です。Uさんが50歳代後半の現役時に社会福祉士の国家試験に合格したことに私は大変な刺激を受けました。それを機会に私はセカンドライフの方向が決まったと言っても過言ではありません。Uさんはいつも朗らかで、周りの人をエンジョイさせる性格なのです。現役時代からの趣味は「自転車」。琵琶湖一周の他、昨年80歳時に1,400kmにもおよぶ太平洋岸(銚子駅~和歌山市)まで走破したとのことです。趣味は多岐にわたっており、旅先での俳句はよき便りとなっています。正岡子規ゆかりの地松山市出身です。

Sさん(87歳)は、私の会社員時代の上司です。自分の信念を通す人、そして負けん気な性格なのです。そのため、時には部下が悩むことがありました。野球少年で会社に入ってからも続けていたようですが、ゴルフは社内でもトップクラスでした。引退後に「これからは毎日ゴルフができますね」と私が話すと、「そんなことはない、平日仕事をして週末にゴルフができることが、目標があって楽しいよ」との返事でした。現在はコースに出ることは少なくなったようですが、毎日「鳥かご」で300球を打っているようです。熱中ぶりを通り越して健康のためとは言え、これには脱帽です。

以上