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事例紹介 老後の生活費 (3/4)

2022/1/20

社会福祉士 北村弘之  

今回から2回にわたり、4事例を通して生活収支を見てみましょう。

事例紹介 ①

【夫婦二人が自宅で自立した生活をおくっている場合、生活費に22.5万円 充てられる事例】

夫はサラリーマンを定年退職し現在78歳。地元のサークルにて活動している。妻は75歳。5年間民間企業に勤めた、子どもを授かったことで退職。子供の手がかからなくなった40歳からパートで勤務したが、年金開始の60歳で仕事を辞め、夫とともに自立した生活を送っている。

この事例では、社会保険料等の非消費分を毎月3万円負担する必要があり、日常生活費として月額22.5万円が最大の出費となる。突然の大型消費材の購入な家屋の修理、また入院費に預貯金を取り崩すことになる。

事例紹介 ②

【夫が脳梗塞で倒れ、介護が必要(介護度3)になった場合の生活収支】

夫78歳。妻75歳で自立。 夫は2年前に脳梗塞で倒れ、左半身麻痺となり、現在自宅で介護サービスを受けながら過ごしている。月に13日はリハビリのためディケアを利用し、ディケアのない日は訪問介護のサービスを受けている。また週に一度は医療的経過をみるために訪問看護を受けている。また妻のためにショートステイを3日利用している。介護度は3。 妻は足腰に不安あるものの夫を支えている。

介護生活が始まった段階で、自宅に介護用のベッドを介護保険内で設置し、段差の解消と手摺の設置を行っている。

介護施設の負担額はますます増加 (2/4)

-2021年 介護保険改正—(2/4)

2021/12/20

社会福祉士 北村弘之  

前回に引き続き、2021年度の介護保険改正によって見直しがあった点について記します。

今回は、「高額介護サービス費の上限額の新設」があったこと、またその他に、2022年秋に改正が予定されています、75歳以上の人を対象とした「後期高齢者医療の窓口負担額の増加」を取り上げています。これらは、高額所得者を対象にしたものですが、後期高齢者の窓口負担は年金200万円以上の人が対象となりますので、ますます年金暮らしは大変になりそうです。

3. 高額介護サービス費の上限額の新設(年収770万円以上)

高額介護サービス費とは、月額の自己負担額が上限額を超えた場合、超過分の払い戻しが受けられる制度です。サービスを受けた月の数か月後に還付があります。

今回の改正では、課税所得が380万円以上の人に対して負担限度額があらたに設けられました。(下表)

一般的な年金受給者の例、(年金のみ250万円:上記課税所得380万円未満の欄)、介護サービス費の自己負担額(1割)が50,000円であった場合、計算式50,000円-44,000円で、6,000円が還付されることになります。

今回の改訂では、保険料の応能負担同様、所得の多い人により負担してもらう政策となっています。

4.参考:後期高齢者医療の窓口自己負担額増加

後期高齢者医療制度は、75歳以上(1,815万人)の医療保険制度で、被保険者の多くは、いわゆる年金生活者です。今回は3割負担の他に新たに「2割負担」が新設されることになりました。(下記表)。

厚労省の発表によると、実に2割負担の対象者は370万人(75歳以上の約20%)となり、窓口での支払額は年間で倍になります。(下記表)。実際の法律施行は、2022年10月以降の見込みですが、これは相当の痛みを伴う改正です

  

介護施設の負担額はますます増加 (1/4)

–2021年 介護保険改正—(1/4)

2021/11/20

社会福祉士 北村弘之  

日本社会は長寿=高齢化が進み、介護を受けて生活する必要な人が増えています。それを社会全体で支えるのが2000年に施行された「介護保険制度」です。20年経過した介護保険法は3年毎に見直されていますが、介護保険の利用者の増加で財政は圧迫され、65歳以上の第一号被保険者にとってじわじわと金銭的負担が大きくなっています。今回は2021年に施行された改正点を生活者目線の「金銭的」な面に絞り説明します。

主な変更点

1.年金額は変わらずも、保険料は増加(65歳以上)

2.施設入所者は、預貯金額基準額の限度額引き下げにより費用負担が増加

3.高額介護サービス費の上限額の新設(年収770万円以上)

4.参考 :  後期高齢者保険医療(75歳以上)の窓口自己負担額増加

以下、主な変更点について記します。

1. 年金額は変わらずも、保険料は増加

65歳以上(第一号被保険者)の介護保険料は、市区町村毎(=保険者)に決まり、前年の世帯の課税状況と本人の収入等により6月頃に新しい保険料が市区町村から通知されます。

基準となる国の保険料段階は9段階ですが、この保険料段階は各市区町村によって決めることができ、例えば横浜市では16段階と細分化されており、本人の所得に合わせた、きめ細かな保険料となっています。保険料の段階差は所得の公平さをもたらすもので、収入が多い人には応分の保険料を負担してもらうための政策となっています。

また要介護認定者数は毎年増加しており、介護従事者への介護報酬が上がっていますので、今年は多くの市区町村で保険料は引き上げとなっています。ちなみに、介護保険発足時の保険料は全国平均月額2,911円であったものが2021年には6,014円となっています。

ちなみに横浜市の基準額は年間78,000円ですが、年金(のみ)250万円の人の保険料は年間85,800円となっています。健康保険料と合わせると、夫婦二人では年間20万円の負担になる家庭が続出しそうです。

また、介護需要が多くなり介護保険料はますます増加になり、3年後の介護保険法改正では、現在40歳以上の保険料徴収は30歳以上になることも考えられるでしょう。

2.施設入所者は、預貯金額基準額の限度額引き下げにより費用負担が増加

施設に入所(特養と老健等)している人の場合、「食費」と「居住費」は自宅で介護される人との公平さから原則全額本人負担となっています。しかし所得の少ない人に対して、本人とその世帯等の所得に応じて軽減措置(補足給付)が図られています。これを「介護保険負担限度額」といいます。

今回の改訂では、預貯金額の限度が大きく引き下げられたため、従来第3段階の人が第4段階となり、軽減措置の対象から外れることになり、負担額が増加することになりました。この8月利用分から適用となっています。

(要点)

・補足給付の預貯金要件は、従来単身1,000万円以下(夫婦で2,000万円以下)であったものが、2021年8月分より大幅に制限されました。(下記 表)

・食費の負担限度額の見直しにより、第3段階②の人は、2倍の1,360円/日となりました。

一般的な年金受給者の例ですと、単身で収入は年金のみの250万円、預貯金額が600万円ある人は、第4段階基準となり、食費と居住費の軽減措置はなく、これらは施設との契約金額となります。特養と言えど、介護サービス費を含むと月額15~18万円になります。(ユニット型の個室の場合)

 厚労省のバンフレットをもとに下記を作成しました。

■低所得者への補足給付の認定条件に、預貯金額(※1)の見直しがありました。従来の単身1,000万円の基準は650万円に見直されたため(下表)、年金等の収入が少ないにも関わらず、補足給付の対象にならない人が増加します。

■2021年8月から、在宅で暮らす方との食費・居住費(部屋代)に係る公平性や負担能力に応じた負担を図る観点から、一定額以上の収入や預貯金をお持ちの方には、食費の負担額の見直しがありました。

なお、第4段階の該当者(軽減措置のない人)は、施設事業者との個別契約により食費を支払うことになります。国の基準額は1,445円(日額)となっています。

※1 預貯金とは、普通・定期預金の他、有価証券、貴金属(時価評価可能なもの)、投資信託、現金(タンス預金)も含まれます。現金は自己申告です。

3、4は次回となります。

   

グループリビングを訪ねて

2021/11/21

「グループリビングを訪ねて」

—自立と共生を目指す住まい—

社会福祉士 北村弘之  

タイトルにある「グループリビング」という言葉は一般的には聞きなれないと思いますが、自立された高齢者の共同生活の場です。現在、全国に50か所ほどあると推測されますが、支援ネットワークに加盟されている団体は16か所あり、NPO法人が中心となって運営しています。特徴は、何と言っても入居者自らの意思で生活を送ることが出来ることです。そして、同じひとつ屋根の下で「自分らしさ」を失わず、ボランティアの支援を受けながら、一緒に共生できる住まいです。福祉施設でなく自宅の延長で、一人でいる時間を楽しみながら、共同で生活を送る場なのです。

今回、川崎市にある「COCOせせらぎ」というグループリビングを訪問する機会があり、運営に当たっている人、入居者さんと意見交換することができました。

ここは2014年7月に開所し、定員10名で現在は満室ですが、最初のころは半分にも満たない人数のため、運営資金に困り、オーナーへの支払猶予を懇願したりしたそうです。というのも、ここの運営は「補助金」頼みでなく、オーナー(土地と建物所有者)と運営にあたるNPO法人の理事(長)、入居者で問題解決にあたっているからです。   https://coco-hokubukawasaki.jp/

私は10年ほど前、あるNPO法人で「グループリビング」開設のお手伝いをしておりました。その際、全国にある数か所のグループリビングを見学する機会がありました。その時、印象深かったのは、どこも「設立者」の想いが、入居者や運営スタッフの気持ちを動かしているということです。その情熱は半端ではなく、関係者とはとことん話をし、信頼関係を築き上げていることです。今回の訪問先「COCOせせらぎ」の理事長前田由子さんもそうでした。本年88歳の現役で、70歳前後からの想いを実現されてきたのです。まさに人生後半をパワー全開でやってこられたのです。住まいで働く人やボランティアを大切にし、自分ひとりの力ではなく、いろんな人に声をかけ共同の輪を作られてきたことは、ご本人の人生の宿命だったのかも知れません。

以前、社会学者の宮本みちこ教授は次のような話をされていました。

「日本人は、家族の古い息苦しい関係から解放され、自由を謳歌したいと願っているにも関わらず、孤独でいることは寂しく思っている。暖かい関係で囲まれている「サザエさん」の根強い人気の理由はそこにある。また、家族からと会社からの解放を楽しみつつも、孤独というリスク回避のために、今まで自らを縛りつけてきた家族集団、共同体に救いを求めているのでないか」

今回の訪問先で冊子をいただきました。この冊子は入居されている方が綴ったものです。この中に、このような文書がありましたのでご紹介させていただきます。

「退職後、夫が亡くなりひとり暮らしになっても、いつも何かしなければならないことを勝手に見つけては、バカみたいに忙しく過ごしてきました。そんな私に”77歳にはバタバタ追われるような生活は無理だよ“ということを教えてくれるように、身体が軋んできました。急ごうとしても急げない。ぐっすり眠ろうとしても眠れない・・・あと1か月で78歳になろうとしているこの時に、私が気づいたこと、それは「追われるような生活はやめて今日一日をていねいに」 ということでした。

 この一節は、68歳の私の心に響いてきました。                         以上

 

ひとり暮らしの親のためにできること

働き盛りの人の「親に介護が必要になったら」

今回のテーマ「ひとり暮らしの親のためにできること」No.7 発行10/25/2021

両親が高齢になりどちらかが亡くなった後は、一人になった寂しさと同時に生活の不安がやってきます。身体の栄養源となる食事から不安は始まり、そして一人暮らしならではの「緊急時」の対応などがあります。

ここでは、東京都墨田区の例に「見守られ制度」のいくつかをご紹介しております。是非、一度親の住む市区町村の高齢者福祉サービスのホームページを見ていただくことをお勧めします。各市区町村には、墨田区と同様のサービスがありますので是非見ておいてほしいものです。

□緊急通報システムの利用

 ボタンを押すと「受信センター」に通報が入ります。看護師が対応し、緊急時には「受信センター」から東京消防庁へ救急車の出動を要請します。言葉が出ない時も、どなたから通報があったかがわかります。また看護師は24時間、いつでも健康相談などを受けます。

  • 対象となる方

  65歳以上の一人暮らしまたは、65歳以上の者のみの世帯の高齢者

  • 利用者の負担金(月額)  生活者の状況により異なりますが0~2,570円です。

   なお、緊急通報システムは、東京都以外の多くの地域で実施されています。

□安否確認センサの利用

 自宅居間に設置した人感センサが人の動きを感知し、異常の有無を判断して通報する仕組みです。

  • 対象となる方  65歳以上の一人暮らし、または65歳以上の者のみの世帯の高齢者
  • 利用者の負担金(月額)  1,000円

  □電話訪問(福祉電話)

 病弱等の理由で定期的に安否の確認が必要な方に、高齢者みまもり相談室の職員が週1回程度電話で安否を確認します。また、電話をお持ちでない方には、電話機をお貸しし毎月の電話料金のうち、基本料金を区が負担します。

  • 対象となる方

     65歳以上の一人暮らし世帯で、近隣に親族のいない方

     前年所得税額が42,000円以下の方で、携帯電話をお持ちでない方

□配食みまもりサービス

     高齢者に配慮した栄養バランスのとれた食事の配達を通じて、高齢者の安否確認を行います。

  • 対象となる方

     65歳以上の一人暮らしまたは高齢者のみの世帯の方(家族同居で日中ひとりになる高齢者の方も含みます)

  • 利用者の負担金

  配食の弁当代は実費負担となります。金額は各事業者で異なりますが区からの補助があります。

  ☆配達時に不在、何か気づきがある場合は、ご家族、担当ケアマネに連絡が入ります。

□墨田区救急医療情報キットの活用

  緊急時や災害時に備え、必要な「情報シート」を冷蔵庫に保管し、救急隊が情報を参考にし、迅速に救急活動を行い、命を守ります。119番通報をします。

 駆け付けた救急隊員が玄関ドアのシールを目印①に、救急医療情報キット②を取り出します。 救急医療情報キットを参考に救急隊員や医療関係者などが救急医療活動を行います。情報シート③には、かかりつけ医療機関、緊急連絡先等、健康保険証の写し、薬剤情報提供書(服薬しているお薬)などが記載されています。 (下図)

7-1.救急医療情報セット

□高齢者の自家用車運転

高齢者の運転事故は、社会的な問題になっています。高齢の親を持つ子どもとして、どのようにしたらよいか困っていると思われます。直接、親に話すと喧嘩になり事態はますます悪化します。車は、生活するための大切な移動手段です。

「生活の足」をどう確保するか?通院、買い物をどうするか?

地域の情報を調べたりして、親と一緒に考えることが大切です。手段として次のことが挙げられます。

・免許更新の際に行われる認知機能検査(75歳以上)の結果を検討して、自主返納を勧める。各都道府県の警察で「運転適性相談窓口」があります。ここでアドバイスを受ける。

・損害保険会社の中に、ハンドルやブレーキ操作、速度など、運転傾向を診断するアプリがあります。親の車に同乗して、アプリを使いながら、運転の診断をすることも、説得の材料になる。危険な事例を示し、根気よく運転をやめるようお願いする。

・協賛自動車教習所で、プロによる指導を受け、自分の運転を細かく確認することができる。

・サポカー(セーフティー・サポートカー)への買い替え。

 衝突被害軽減ブレーキ、ペダル間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報、先進ライト

                                    以上

印刷はこちら→親に介護が必要になったら NO.7

「老後の資金がありません」

2021/8/15

「老後の資金がありません」

—喜劇舞台—

社会福祉士 北村弘之  

2019年に物議を醸しだした麻生太郎氏の「老後資金2000万円」。50歳代の多くの人は、そんなお金はいまさらどうやって稼げればよいのか。毎月天引きしてされている年金で生活できるはずではなかったのかと大騒ぎになりました。

実は専門家であるファイナンシャルプランナーは、この発言は現状の日本の社会を現わしているということを聞きました。つまり、定年を迎えた時期には、最低限2,000万円の預貯金は必要なのだと。もちろん家族の事情で異なります。この要因の一つに、老後の年金額は頭打ちであること(増えることがない)。また公的な医療・介護保険料の負担はますます増えて、窓口の負担割合も増加しているからです。

私は、社会福祉士として、この10年間に通算17名の「後見人」を受任してきましたが、その多くの人は預貯金50万円前後で生活しています。日本社会の社会保障制度は、生活困窮者に重点をおいており、最後の砦は「生活保護」制度というセーフテイーネットで守られていますので資金面では安心です。(人権の側面では不安はあります・・・)

さて、タイトルにあります劇場喜劇版「老後の資金がありません」を鑑賞してきました。ダブル主演の渡辺えりさんと高畑淳子さんの共演です。舞台は、両名の家庭の悲喜こもごもな生活をコミカルに表現していました。娘の結婚費用300万円負担のことからはじまり、親の葬式費用の負担を兄弟のどちらが負担するか、親の生活費、そして親が認知症になり徘徊している様子、また突然やってきた定年前の夫の会社倒産による退職金なしの姿、老後の年金詐欺を図るなど本当に現実的な話題が次々と出でくるのです。その中で主演者は、人間はどうしても「見栄を張っている」という発言がありました。片方の家族(高畑さん方)は葬儀の際、坊さんを呼ばない選択していることの話を聞くと、もう一方(渡辺さん方)の家族は葬式費用に300万円をかけたのは、「見栄を張っていた」というのを告白するのです。

私もそうですが、人間って他人に対してどうしても強がりを言ったりしますよね。それが、原動力になりプラスに向くこともありましょう。しかし、その反対に「まずかった、あのように言わなければよかった。もっと慎重に考えるべきだった」という想いもあるでしょう。

舞台のエンディングで、主演者は「この先何とかなるでしょう」ということを前向き語っていました。長い人生、気持ちはそうでないと過ごせません。日々一日を楽しく暮らすことが人間によいのではないかと改めて感ずる3.5時間の舞台でした。

この舞台は、東京(~8/26)と大阪(9/1~15)で公演されます。この他10月には同じタイトルで映画の上映があるようです。原作は、ともに2015年に発表されています。               以上

 

男性の介護5か条

働き盛りの人の「親に介護が必要になったら」

今回のテーマ「男性の介護5か条」  No.6       発行9/25/2021

男性の介護者が最近増加にあり、ある統計では介護者の4割は男性となっています。過去においては、妻が夫の両親の介護をすることが一般的でしたが、世帯が離れ離れになっていること、また女性の社会参加により、夫の両親は夫がみて、妻の両親は妻がみるようになってきました。

そこで、特に男性の介護に必要な項目を挙げてみました。(下図)参考にしていただけたらと思います。

図6-1.男の介護5か条 図

特に、一人で介護のことを抱え込まないための「支援の輪」(下図)も掲載しました。(朝日新聞編集) 関わる人が多いほど、様々な情報収集ができます。決して、一人では悩まない抱え込まないようにしてもらいたいです。

6-2. 男の介護 支援の輪 図

以上

印刷される方は→親に介護が必要になったら NO.6

働き続けるための工夫

働き盛りの人の「親に介護が必要になったら」

今回のテーマ「働き続けるための工夫」  No.5       発行8/25/2021

親に介護が必要になった時、その子供である人の多くは50歳前後で、その多くの人は仕事の中心的な役割を担っている人なので、すぐに親の面倒を見ることは困難です。また親の介護ために仕事を辞める人がいますが、その結果収入が減り、経済的な困窮が一層増しているという統計が出ています。介護の期間は、人それぞれですが約半数の人は4年未満という統計があり、平均では約5年です。(下図)

5-1.介護は何年続くか 図

厚労省の統計では、介護を機に仕事を辞めたあとの変化を調査した結果があります。これによると、辞めたあとでも精神的な負担は65%の人に負担が増した。また肉体的には56%の人に負担が増したとあります。経済的には80%近くの人に負担が増えたとあります。

つまり、介護のために仕事を辞めたことで逆に精神的に肉体的に、しかもお金の面でも負担が増しているということです。(下図)

5-2.離職時の変化 図

ここでは、働き続けられる制度をご紹介します。

一つは、このような社会的事情を考慮した「介護保険制度」です。是非この制度をうまく活用したいものです。第2回目にあったように「相談窓口」を訪れ、現状の問題を訴え、どのようにしてほしいかを説明することで適切なアドバイスを得ることができます。

もう一つは、働く人にとっての「介護休暇と介護休業制度」です。勤務先の会社の就業規則にありますので上手に利用してみることです。制度利用の前に、職場では、親などに介護が必要になった際、自分ひとりで悩みを抱えずに上司や人事部に事情を話すことが一番大事です。それは仕事の調整や休暇のとり方につながるからです。

また、有給休暇は給与の保証がありますが、介護休暇(原則、年5日)と介護休業(原則通算93日間)は残念ながら法的には無給となっていますが、介護休業の場合は雇用保険から67%の給付があります。法定上の93日間の介護休業の期間は、福祉や介護の専門家に相談する時間で、親の精神的な支えに充てます。介護は長期戦です。決して自分で介護する時間ではないことを意識しておきましょう。

一度、自分の会社の就業規則を見ておくことはよいでしょう。

以上

印刷はちら→親に介護が必要になったら NO.5

痛くない死に方

2021/4/10

「痛くない死に方」

—ついに映画化—

社会福祉士 北村弘之  

2016年に発刊された医師である長尾和宏氏の著「痛くない死に方」が映画化され、この2月より公開されました。早速見てきました。”このような死に方もあるんだ”と改めて知ることができました。

誰にでもやってくる死。昭和30年代は、まだ我が国は医療の発展途上期であり自宅で命を全うするのが一般的でしたが、周りの人は、死に行く人の姿を通していずれ来るであろう自分ごととしてとらえることができました。そして、「死」を間近くに経験することによって亡くなった人のことを偲びながら語り明かしたものでした。私の祖父母が亡くなった幼児期にはそうでした。

 しかし、高度成長の発展により都会に人が移りはじめ、そして核家族化が進み、いつのまにか我々にとって「死」の場所は医療機関というのが当たり前のようになってきました。

タイトルの原作は(映画と同名)は、尼崎市でクリニックを開設している医師長尾和宏氏の著です。ここでは数名の医師と一緒に診療にあたっており、24時間365日の自宅への訪問看護も行っている医療機関なのです。その中心的な役割である長尾医師は、現代の治療方法は「医療=薬」となっているのではありませんか?という問いかけをしています。彼は医師の役割は、その人の生活を見直すことであり、薬はその補助であるべきだと言っています。

さて映画では、ガン末期の2人を、「痛いおもいをして亡くなる人」と、それなりに医療スタッフや家族とともに緩やかにそして「痛み少なく亡くなっていく人」を映像化しています。前者は、終末期を病院で過ごすよりも自宅で過ごしたいという想いで在宅医療を選んだものの、不慣れと経験の乏しい医師の振舞いの中、家族ともども痛みを続けながら亡くなっていくものでした。後者は、患者本人が自分の終末期を悟り、自宅で過ごしながら、治療中心より、患者の心を意識した医師と家族の力で痛みのない終末期を過ごしている姿なのです。

各場面で、緊迫するシーンがあり、人間はこのように亡くなるのかというのがリアルに伝わってきました。特に下顎呼吸です。医師はこのよう時を「台風上陸」と言っていました。上陸した台風が通過すると我と穏やかな晴天(死)がやってくると比喩していました。

この映画監督である高橋伴明氏は1949年生まれ。映画を通じて「死を考える」よりは「生き方を考える」ことが大切と著に書いています。その監督の終末川柳作品をいくつか紹介します。

・延命の 家族愛とは エゴイズム

・自尊心 紙おむつが 踏み潰す

・救急車 在宅看取り 夢と消す

・尊厳を 遠くの親戚 邪魔をする

・良い数値 出るまで測る 血圧計

この映画に出演された女優の坂井真紀さんの言葉です。「子どもは小さいうちは目が離せないし、四六時手がかかるじゃないですか。死ぬときも手がかかるんだ、ということが自然なことと認識されたら、きっと家族も社会も当たり前にフォローし合えますよね」 この言葉に私と妻の両親の見送った振舞いに反省しています。                                                 以上

介護認定申請手続きを理解しましょう

働き盛りの人の「親に介護が必要になったら」

今回のテーマ「介護認定申請手続きを理解しましょう」No.4   発行7/25/2021

介護保険は2000年に施行された第5番目の公的保険です。少子高齢化の傾向や、核家族化による介護の担い手が不足することなどを見越し、国が’80年代から検討がされてきました。

現在の介護保険制度では、65歳以上の第一号被保険者と40歳~65歳未満の第二号被保険者がいます。圧倒的に第一号被保険者が多いのですが、パーキンソン病や慢性閉塞性肺疾患等16種類の特定疾病をもつ第二号被保険者の人も介護サービスを受けることができます。

65歳の誕生日近くになると行政から介護保険被保険者証の送付があります。しかし介護が必要となる心身の状態にならないとサービスは受けられません。介護サービスを受けたい場合は、「要介護・要支援認定」の申請書を市区町村窓口や地域包括支援センターに申し出る必要があります。かかりつけ医等の医師診断書や自宅訪問等により、どのくらの状態なのかを見極めて、程度の軽い要支援1,2から要介護度1~5と7段階の介護度の程度が決まります。(下図)

4-2.要介護認定の流れ 図

申請手続きは無料で、介護度の判定が出るまでには約1か月がかかりますが、その間に介護が必要な人はとりあえず自費でサービスを受け、介護認定後に償還依頼することになります。

介護サービス内容は要介護度により異なります。また、在宅で受けるか、施設サービスで受けるかによってもことなります。詳しくは、下図を参照下さい。

4-1.介護認定とサービス 図

介護サービスを受けるには、3つの書類があります。(図 4-3.参照)

  • 「介護保険被保険者証」 (下図 上段 表面と中面)
  • 「介護保険負担割合証」 (下図 下段 左)

自己負担額は本人の所得額により、1割負担か2割負担か3割負担かが決まります。

  • 「介護負担限度額認定証」 (下図 下段 右)

施設入所や短期入所者を対象に所得の低い人向けに所得に応じた食費や居住費の負担限度額が設けられており、自己負担が軽減される仕組みです。

4-3-1.介護保険証等3種類

以上

印刷はこちら→ 親に介護が必要になったら NO.4