後見制度の課題 2

7/20/2023

社会福祉士 北村弘之

引き続き後見制度の課題の2回目です、今回は「後見制度の事務処理上」から見た後見人の制約事項への対応について2つ記してみます。

【本人死亡時の事務処理】

本人(被後見人)が亡くなると後見は終了して被後見人についての相続が始まります。そのため、すでに発生した本人の入院(施設)費や家賃等の債務は、相続人が放棄しない限り相続人が承継し、相続人が支払義務を負います。

しかし、入院費等の支払いが遅れることにより、損害金等の請求されることがあるため、後見人であった人が速やかに支払いをすることがあります。但し、このような場合は、相続人と連絡をとり、きちんとしたエビデンスをとっておくことが必要となります。

ところで被後見人には、身寄りがない、また親族と疎遠になっている人が多く存在します。このような場合、後見人であった人が引き続き、死後事務を担当することがあります。これは、「事務管理または応急処分義務」としてあります。このような場合は、事前に家裁の許可を得ることが必要になります。死後事務とは、遺体の引き取り及び火葬と埋葬(実際には葬儀社に連絡して行ってもらう)、そして相続人の調査、相続財産管理人の申し立て(家裁)と続きます。私が担当した人では、火葬は私と葬儀屋の2名の立ち合い、また相続人(親族)が相続放棄手続きをしたため家裁が指名した相続財産管理人の就任まで、亡くなってから8カ月かかりました。本当に被後見人亡き後の手続きは後見人にとって、後見業務を行う以上に手間のかかることになります。

専門職後見人であっても、自分の親族の死後事務を担ったことがない人は、慣れない事務処理に困惑することになります。

【医療同意と延命治療】

本人(被後見人等)が病院入院時や施設入所時に「急変時における延命等に関する意思確認書」を交わすことになります。これは意思を尊重して本人と交わすことになっています。しかし本人が判断できない場合、代わって親族が医療同意をおこなうことになります。よって医療同意は後見人の範囲ではありません。

しかし、身寄りがなく、本人の判断能力がない人の場合はどうなるでしょうか。このような場合、本人の判断能力が多少でもあった時期に本人に確認しておくことが大切です。それも、施設関係者やケアマネなどの関係者とともに確認することになります。それが出来ない場合は、本人と関わりがある医療や福祉関係者、後見人等、知人など本人と関わりのある人全員と「関係会議」を開き、それぞれの考え方を集約することを重ねていきます。いずれも記録として残しておき、いざとなった時に判断する材料になります。

急変時、在宅また施設でも救急車を依頼することになります。その際に大切なことが第一次的な「急変時の意思確認」となります。そうしないと、延命する意思のなかった人が、人工呼吸器や心臓マッサージ、気管内挿管等の処置が施される状態になります。これは本人も親族、また医療にとっても望まない治療になります。

同じく、病院に入院時にも同様な「意思確認書」が求められますが、同様の手続きになります。

常日頃から、どの程度身体上の治療を受けるかを確認しておくことは家族を含めた周りの人の大切な行為です。