私の後見人等の事例紹介 2

3/20/2023

社会福祉士 北村弘之

Bさん  男性 受任時77歳の事例

認知症の治療のため、精神病院に入院中に後見人を受任(‘19/12月)。独身。弟様による任意入院。受任後初めての面会では穏やかな表情であったが、開口一番「何でここに入院させているのか、これは弟が入院させた」とのこと。このようにして、後見人として初めての面談はいつもおっかなびっくりの状態です。次の言葉は、「お金が必要だ。どこにお金を持っていった」かでした。その後、面談時には、時には怒りの表情が見られ、病院の職員にも手を挙げることもありました。そのような中、弟さん夫妻と病院で面会しましたが、本人とは顔を合わすこともなく、これまでの生活環境や親族状況を確認しましたが、言われたことは「ふだんは、ほとんど接触はなかったけれど、何か問題があると役所や病院から電話があったりして困っていた。今後よろしくお願いします」とのことでした。

弟様はすでに特養への入所申込をしていましたが、進展がないので改めて私は再申し込みを行いました。しかし、「暴言を吐く人はお断りします」との特養もあり、入所は進みませんでした。このような態度を見せる特養には力がないと考え、その特養には今後入所先候補に入れないことにしています。ようやく、入所先が決まり、後見人はアパート契約の解除、電気・ガス・水道代の契約解除、荷物の廃棄手続きが続きました。この段階で生活保護(家賃扶助)は外されましたが、荷物廃棄は生活保護(生保)から実費手当が支給されるとのことで3社への見積もりを行う必要があり、立ち合いは1社ずつということになり手間がかかりました。そして、生保では医療扶助があったため、医療保険料とともに医療費・薬剤費とも支払わなくてもよかったのですが、生保を外れたことで医療保険は後期高齢者保険に加入手続きとなりました。

特養入所して1年と半年が経過し、本人に介護者に手を挙げたり、暴言を吐くことは少なくなり、面談時の表情に笑いが見えたり、そして表情は丸くなり、若いときの思い出を聞かせてもらうこともできました。ただ、肺気腫になり会話中に「ゼイゼイ」して本人も息苦しさを感じることが多くなってきました。後見人は、医師や看護師スタッフと相談し、現状を理解した上で、本人と相談員、ケアマネの3者で今後の看護態勢について確認したところ、心肺停止の場合は救急搬送せず特養内で看取りを行い、苦痛等がある場合医療機関に受診することになりました。本来は、親族や後見人も立ち会う必要がありましたが、コロナ禍の中でしたので、その際の録音を聴き承諾した次第です。もちろん弟様の承諾を得ています。その後4か月ごとのカンフアレンス(全員で9名)で「看取り内容」を再確認しています。

この例では、入所直後にコロナ禍になりました。これまでの生活歴は弟様に確認し、本人との面談時には生まれ故郷や仕事の話をしていますが、親族(父母、兄弟7名)のことを話すこともなく過ぎています。私は、この人の人生に何があったのかはわかりませんが、せめて面談時には好きなお菓子を持参して話すように努めています。