「デジタル医療革命2023」を観て

2023/3/7

「デジタル医療革命2023」を観て

–NHK放送–

社会福祉士 北村弘之  

1月のNHKBS放送番組で標題の取り組みが紹介されました。私にとって、医療現場が最近のデジタル化の中で、大きく変貌している様子を知るきっかけになりました。そしてデジタル化によって医療現場の更なる信頼度向上と迅速な診断ができることを望むと同時に、一人ひとりの医療健康情報を医師間で共有して、正確な診断に役立て、不要な薬の削減に取り組み、前向きな生活が送れるような社会の実現を望みたいものだとつくづく感じた次第です。

番組では、いくつかの先進的な取り組みが紹介されていましたので記してみます。

  • 英国でのNHSアプリ利用

スマホをみれば、国民一人ひとりの生まれてからのどこの医師が診断したか、そして症状名や服薬状況が一目瞭然とわかるというサービスの紹介でした。英国ではすでに3,300万人が利用しており、患者の情報は当然医師間でも見られ、何が原因で症状が悪化したかを他の医師でも判断できるものでした。

私は診察にいくと、既往歴や服薬状況を医師から聞かれますが、過去のことはメモしていかないとわかりません。ましてや、いつ何の薬を飲んでいたかなどは記憶にありません。この紹介されたシステムは国民側にとっても利益があり、また医師側としても診断材料のひとつとなっており、重複した服薬を減らすことにもつながっていました。日本ではようやく電子カルテが普及してきましたが、病院間をつなぐものにはなっていません。英国のMHSアプリのような機能を我々も得たいものです。(スマホイメージはNHS HPより)

  •  診察室が変わる

コロナやインフルエンザの検査では、のどや鼻の中に綿棒のようなものを差し込み、粘膜を採取する方法がとられています。患者側は痛みを伴うことも多く苦痛を伴う検査のひとつです。そこで、問診と、のどの奥の画像を組み合わせてAI分析にかけるという新しい診断システムです。このAI分析には何十万枚という’のど’の画像を覚えさせており、医師による診療見落としを防いでいるようです。’22年に厚労省の認可を得ています。まもなく、我々もその恩恵に預かることになりそうです。患者にとっては痛みは発生せず、しかも検査結果は正確で早く出るようです。(図は日経クメステックHPより)

  • 治療アプリ 

ここでいう治療用アプリとは、遠隔で診療を行うというものではなく、本人のスマホに導入した「治療アプリ」と対話しながら、毎日の血圧や生活記録を入力して、日々変わるからだの状態を見ながら健康管理していくというものです。情報は患者と医師で共有できます。日本では、現在「高血圧アプリ」と「ニコチンアプリ」の2種類が厚労省の認可を受けて現場で機能しています。米国ではすでにアプリとして「糖尿病」「うつ病」「ADHD」「PTSD」「筋肉炎症」「片頭痛」などがあり利用されているようです。

番組では、「高血圧アプリ」の利用例を紹介していました。この人は、血圧が高くなってきたのですが、降圧剤の薬を飲まなくても済むように、「毎日の食事内容」や「運動量」などをスマホに入力していくのです。高血圧では塩分の摂りすぎが影響されていますので、治療用アプリの調理方法には塩の代わりになる材料を紹介していました。効果が出ることで継続していくモチベーションが上がり、本人が前向きになり、薬を服用しなくてもよい状態となっていました。  

https://cureapp.co.jp/productsite/ht/forpatient/  (提供会社のHP)

  • 全体を通して感じたこと

これまでの医療技術は、医師の技術力向上や治療時間の短縮、早期発見等に大いに貢献してきました。今回の映像紹介では、デジタルツインの応用例として、心電図をとることで画面上に実際の心臓の動きを表示して診断する技術の紹介、また外科手術の技術向上と医師不足を補う「AIによる内視鏡データベース」や「腹腔鏡手術ロボット」技術が紹介されていました。とにかくデジタル技術が医療現場で大きな担い手になっていることを頼もしく感じた次第です。

我々国民にとって、身近な「英国でのNHSアプリ」のような何処にいても自分の医療情報を知る、そしてその情報を医師間同士で共有できることによって確実な診断に持っていくことが望まれます。しかしマイナンバーカードの普及にポイントをつけないと登録が進まないような状態では難しいでしょう。しかし、国民の健康を守ることが国家の目標であるならば、早期の実現を望みたいものです。           以上

下図はNTT西日本 BIZ HPより