「先々の住まい」 2/8

2022/4/20 (No.2/8)

—70歳代前半の人が検討してほしいこと—

社会福祉士 北村弘之

2. 老齢期の支え

老齢期になると、人間は誰しも体力や精神的な力は徐々に低下していき、興味のあったことも薄れ、若い時は簡単にできたことが難しくなったり、できなくなったりすることがあります。しかし、それは生命の寿命から見て自然なことなのでしょう。

体力の衰えは年齢が加わることで必然的にやってきますが、しかし知力や精神的な衰えはカバーすることはできます。それは家族や友人、そして支えてくれている人々との「支え合いや触れ合い」ではないかと最近のコロナ禍の中で考えるようになりました。

この「支え合いや触れ合い」は、からだの不調原因を取り除く医療や、生活の支えとなる介護と同等か、それ以上と感じています。

人は、ケガや体調不良の時に初めて気づくものです。「自分が衰えてきた」と。しかし、周りには支えてくれる人がいるから、ふたたび前に進むことができるのです。

3.住まい方の選択

さて、本題の「住まい方の選択」に入りましょう。

住まい方の選択とは、単純に老人ホームなどの施設に入居することだけでなく、自分にふさわしい「老いの過ごし方」を住居の視点に合わせて考えていきたいというものです。なぜなら「住まい」は自分の生き方を実現するための基盤だからです。しかし、この準備には時間と労力を要しますし、そして多くの決断事項が必要となります。できれば、家族と一緒に自己決断できる70歳代前半迄に検討することがよいのではないかと考えます。それは、身体精神的な行動、そして判断力の限界が見えてくるからです。そして利用可能な資産力(マネープラン)が見えてくるからです。

住まい方の一つには、住み慣れた自宅(戸建て、マンション他)を改良して継続して過ごすこともあります。もう一つは自宅を離れて有料老人ホーム等で生活することもあります。人生の先々はどうなるかは誰もわかりません。しかも配偶者と生活をともにしていても、どちらかが先に亡くなれば独り身になります。その時にオロオロしないようにしたいものです。

自宅で継続する場合、そして自宅を離れて過ごす方にも共通する項目は次のようなことでないでしょうか。まずは、家族(配偶者など)とどのような生活を送るかです。人間はお互いに支え合って生きています。お互いの自立した生活を認め合いながらも、どのような日常生活(自分らしさも含め)を送れる生活環境を作り出すか、または維持することをお互いに共通認識することが肝心です。次に、いずれやってくる身体能力の衰えにどのように対応していくかです。ストレッチをしたりしていてもからだの細胞は劣化していきます。そして偏りのない食事はもちろん、段差の少ない住まい環境をどう作っていくか、そして何といっても現在の年金受給額等や資産(預金・不動産等)の範囲でどのような生活が送れるか、お互いに話しておくことが大切となります。そのためには、友人や先輩仲間と情報交換や本などを通して知識を入れておくことが大事です。