老い支度のひとつ「遺贈寄附」

2/26/2020

老い支度のひとつ「遺贈寄附」

社会福祉士 北村弘之

私は、後見人の仕事を家庭裁判所から受任しております。被後見人の方のうち数名の人が、判断能力があるうちに「遺言書」を作成しております。遺言先として、相続人以外の団体や自治体に寄附するものがありました。これらは、ご本人が生前に自らの想いを社会に役立てたいとするもので、遺贈寄附(遺言による寄付)と呼ばれています。

このように相続の受けとりがない方や親族がおられても疎遠なおひとり様が、亡くなったあと自治体や団体に寄附しようとするものです。相続財産が国庫に入るなら、お世話になった団体へ社会貢献したいという想いがそうさせているのでしょう。ちなみに、2017年度ではいわゆる相続人が不在で国庫に引き継がれた金額は何と525億円とのことです。

さて、それではどのよう送り先(遺贈先)があるのでしょうか。

・自治体等への遺贈寄付

・NPO法人や公益財団法人等への遺贈寄付

◇遺贈先のひとつ自治体寄附(遺贈)

自治体では生前ですと「ふるさと納税」が有名ですが、ここでいう遺贈寄附は亡くなったあとのもので、遺贈されたものは例えば保健福祉施設の修繕や、自然環境保全のため、教育振興のための目的用途に使われています。殆どの自治体は窓口を設置しており、遺言書の作成等にあたる専門家の紹介を行っているところもあります。詳細は各自治体のHPで参照できます。

また、最近では「ふるさとレガシーギフト」と称して生前に財産を銀行に信託し、死後銀行から相続人に財産を引き継ぐ「遺言代用信託」の仕組みができました。現在、奈良県生駒市と北海道上士幌町がおこなっており、こちらは遺言書の作成は不要です。

◇2つ目の遺贈先は

NPO法人や公益財団法人等といった団体への遺贈です。このような団体には様々なものがありますが、これも基本生前に遺言書に遺言先を作成しておくことが必要です。代表的な団体として、認定NPO法人国境なき医師団、公益財団法人ユニセフ、日本赤十字社、公益財団法人交通遺児育英会、公益財団法人日本盲導犬協会などがあげられます。最近、「全国レガーシギフト協会」が設立され遺贈先の紹介や遺言書の作成等を行う弁護士等を紹介しています。

(参考までに、認定NPO法人国境なき医師団日本の2018年の個人寄付額は78.8億円です。この金額には遺贈のみならず一般寄附も入っています)

◇遺贈寄附の想い

おひとり様で、身寄りがいない、いても「疎遠な親族に相続させるより社会に役立てたい」また「自分の意思で生前にどこに自分の財産を託すか決めたい」という想いの人が多くなっているようです。まずは、弁護士や司法書士、税理士等などの専門家に相談されるのがよいでしょう。自分の想いを託すという新しい老い支度のひとつになってくるのでしょう。但し、現金・預金等の他、不動産や有価証券等なども遺贈対象となりますが、不動産や有価証券は税金の対象となる場合がありますので専門家に相談することがよいでしょう。

以上

印刷される方はこちら→遺贈寄附とは