社会福祉士 北村弘之
前回の「遺言書」に続き、第二回目では「法定後見」について説明いたします。
なぜ、成年後見等が必要なのでしょうか?
具体的な例を取り上げてみましょう。
①認知症のある父親が「老朽化した家の改築をしませんか」という業者の訪問を受けているようで、だまされていないか心配
②父親が死亡し、財産を自分と弟で相続するが、知的障害のあるために自分では手続きできない弟の相続や財産管理はどうすればよいのかわからない
③私が認知症になったときに、誰が私に代わって不動産の管理や入院、福祉施設への手続きをしてくれるのか?
このように主な対象者は、認知症の人、知的障がい者、精神上の障害がある人が主となります。
【後見制度】 さて、後見制度を図でまとめると次のようになります。成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。任意後見については、第3回目でとりあげます。後見の基本職務は、被後見人(守るべき人)の「財産管理」と「身上監護」です。
参考までに、法定後見の他の契約について簡単にまとめてみました。(次図)
さて、法定後見は、どのようなものか、どのような場合に作成するのか、また利点とデメリットについて下図にまとめました。
次に、「法定後見の手続き」についてまとめました。家庭裁判所に申し立てをおこないますが、「申立準備」に一番手間がかかります。具体的には、医師の診断書の取り寄せ、親族等の戸籍調査、財産の調査等に時間を要します。弁護士に依頼するのもよいでしょう。
申立準備から、登記(法務局)が済むまでは3~5か月ほどかかります。
【成年後見人等の関係者】 最高裁判所の資料を参考にしています。下図の右側下にある数字を見ると、専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士等)で70%近くの後見人を受任しており、親族後見の割合が半減していることが分かります。これは、財産の横領等があったからと推察されます。
【成年後見人制度の事務処理上の課題】を挙げてみました。現行の制度では、被後見人の死亡と同時に、後見人の職務は停止します。しかし、身寄りがない等の場合、火葬や医療機関等への支払に応じる必要があります。このような場合、専門職後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士等)は民法の応急処分義務や事務管理の範囲で手続きを行っています。
【最近適用が多くなりました、「後見制度支援信託」について参考までに記載しております】