社会福祉士 北村弘之
老後においては、身体能力の低下や認知症等により、財産(預金・不動産等)の管理が不充分になり、かつ子どもへの財産継承など不安な面が発生します。 これらを解決する術として、現状の日本の社会制度の中での方策を取り上げ、利点と注意点を記してみました。このシリーズは5回にわたり連載します。
1.遺 言 書
2.法定(成年)後見制度
3.任意後見制度
4.家族信託 ®
5.生命保険信託
誰しも、高齢になると身体能力の低下ととともに、判断能力の欠如が見られます。下図は、人生の「状態」に合わせた「生前の契約文書」を表したものです。つまり、判断能力のある時に自分の老後の財産管理や継承方法を社会制度(遺言書、任意後見制度、家族信託、生命保険信託)と、判断能力がなくなった際の「法定後見制度」の社会制度があることがわかります。
まず、今回は「遺言書」についてとりあげます。遺言書は、どのようなもので、どのような場合に作成することができるのでしょうか。また、遺言書の利点とデメリットを取り上げてみました。なお、2019年7月に民法が改正されます。下記記載事項は、現行制度のものです。
【遺言書記載の前に注意したいことは】
・まず「財産目録」を明確にし、誰に何を相続するかを決定してから記載しましょう。
・また、相続財産は被相続人の「想い(意思)」を明確にしたのちに分与するのがよいでしょう。それは、残された家族が被相続人がどのような気持ちでいたか知ることで、遺言書の内容に多少不満があっても、話がまとまるものだからです。
【遺言書 記載にあたっては弁護士や司法書士等の専門家に相談しましょう】
・相続する財産目録が正しいものか確認しましょう。 (例えば、不動産の場合は、登記簿と合致、また預金等は実際の通帳と照らし合わせて銀行名等と口座番号を明確にします)
・相続割合については、相続割合した理由等があるとよいでしょう。あとで残された家族がもめないためです。
・遺言執行者(第三者)をあらかじめ遺言書に記載しておくと、相続時にスムーズにいくことになります。
【公正証書について】
・公正証書遺言書の場合、公正役場に相談しましょう。
・第三者の証人2名が必要です。該当者がいない場合、公正役場が推薦してくれます。(証人には謝礼が必要となります)
・公正証書は、3部作成され、一部は公証役場(全国どこでも閲覧可能)、一部は被相続人、一部は遺言執行者が保管します。
遺言公正証書のイメージです。