奄美を訪ねて世界自然遺産

2023/3/20

「奄美を訪ねて」

–1回目 世界自然遺産–

社会福祉士 北村弘之  

2年ぶりに春の奄美大島を訪ねました。今回の旅行記では奄美大島の自然の姿と思いを込めた仕事をしている人をご紹介いたします。まずは奄美大島の自然のご紹介です。

奄美大島は鹿児島県と沖縄県の中間にある鹿児島県の離島です。江戸時代には、薩摩藩によるサトウキビの召し上げで島民は大変苦しんだということで、今でこそ同じ県民ですが根深い感情は現在も続いているようです。

【金作原原始林】

太陽が降り注ぐイメージのある奄美大島ですが、実は雨が多い島なのです。島の北では晴れていても南では雨ということもあるようで、名瀬の中心部のホテル前では晴れていましたが、幾山かを超えた南の住用町(マングローブ原生林)では小雨でした。

実はこの雨が亜熱帯の気候を生み出し、島独特の「原生林」を形成しているのです。それが世界自然遺産となっており、ガイドの言葉を借りれば、島全体が「大きなブロッコリー」のようなこんもりとした樹木で覆われているのです。

ホテルを出て車で40分。車一台がやっと通れる道を上ったところにある「金作原原始林」に到着。この森には過去に多くの木が住宅建材として用いられていたための林道はありましたが、現在では多くの林道は樹木に覆われているそうです。同行の認定ガイドさんの説明では、奄美の樹木の50%はブナ科(シイの木、カシの木等)という説明を聞きました。そして鳥の鳴き声に耳を傾けることができた時間でした。また、道路上には、特別天然記念物の「アマミノクロウサギ」の糞がいたるところにありましたが、夜行性のため残念ながら見ることはできませんでした。現在、島全体では推定35,000頭(2022年秋発表)が生息しているということです。20年前は推定3,000頭だったいうことでしたが、外来種のマングースの捕獲や木の伐採を止めたことで増えたようです。

【カヌーツアー マングローブ原生林】

マングローブ原生林のカヌーツアーに参加しました。初めてのカヌー。バトルの操作を習っていざ川に入りましたが、最初は慣れず右や左に揺れうまく進みませんでした。ガイドさんの手ほどきで転覆もなく約1時間楽しみました。マングローブとは、海水と淡水が混じる汽水域で生育する樹木群のことで今回初めて知りました。説明を聞く前まではマングローブは樹木のことと思っていました。一般的に我々が標高の高い山にある植物を「高山植物」というのと同様とのことでした。夏には、観光客でマングローブの湿地帯はカヌー渋滞になるということでした。偶然にも、もう一組の参加ご夫婦は川崎市宮前区から観光で来られた人でした。

【トンネルが多い】

島唄を聞きたくて夕食は2年前と同じ「ならびや」(屋仁川通り)です。大将の和田さんと知人の二人による三味線と唄声を聞きながらの郷土料理を味わいました。東北地方から来た4人組の客と話ができ楽しい時間でした。唄の合間に、大将から奄美の話を聞かせていただきましたが、島唄の「島」とは集落のことで、その集落ごとに「島唄」があるということでした。沖縄の島唄は、琉球王からの命令されたもので人間国宝の唄い手が誕生したようですが、奄美大島のそれはプロになった人はいても人間国宝になる人はいないということです。それは島唄が集落単位のものであったからということを大将から聞きました。

奄美大島の地形は殆ど「山」であり、昔は隣の集落に行くにも幾山も越えたり、また舟で行き来したりしていました。しかし現在は島のいたるところに「トンネル」が開通し、以前は名瀬からマングローブのある住用町までは車で1時間30分ほどの山道でしたが、現在はトンネルの開通で30分です。実に島のトンネル数は38本あり、1,000m以上のトンネルが12本あるということです。行き来する車の台数は多く、生活と商業の発展に欠かせない手段になっているようです。このトンネル工事から排出された土砂を埋め立て住宅地等にているとのことでした。

【陸上自衛隊 駐屯地】

名瀬市内から車で約15分の高台に「陸上自衛隊奄美駐屯地」があります。我々は駐屯地には許可なく入ることはできませんでしたが、一般道の脇から建物を観ることができました。ここは2年前に開設され、隊員は約300名で主な任務は「地対艦ミサイル」防御とあります。(奄美大島には、もう一つ南部の瀬戸内町にも駐屯地があります) 昨年政府が打ち出した「敵基地攻撃能力の保有」の拠点となるべく、南西諸島の島々に自衛隊のミサイルが配備されていきます。太平洋戦争での悲劇が、この風光明媚な島で再度繰り返されないことを祈って帰途につきました。

以上