後見人等の職務

1/20/2023

社会福祉士 北村弘之

後見人等とは

 後見人等の「等」とは、法定後見上3類型があることを示しており、それぞれによって職務の範囲が限られています。

・判断能力が殆どなくなった人に適用(一番重い) —-後見類型

・日常的な行為は判断できても重要な契約等に支援を受ける人(中程度) –保佐類型

・日常的な行為はほぼ本人ができるが必要時に支援が必要な人(軽程度) –補助類型

後見類型では、後見人は本人の法律行為や財産管理など全ての代理権/取消権をもって職務にあたっています。また、保佐/補助の類型では、本人のできないことに対し、保佐人や補助人がその本人に代わる代理権/取消権を行使する職務にあたっています。なお、代理権の項目は、本人の生活が不安定にならないように選択します。

これら3類型の判定は医師の診断書をもとに、家庭裁判所が審判します。

後見人等の職務

 それでは、具体的に3類型のうち一番受任者が多い「後見人」の職務について説明しましょう。

 後見人の職務は「財産管理」と「身上監護」の2つから構成されています。前者は本人の財産の管理に関する事務、後者は本人の生活、療養看護に関する事務となります。ここでいう事務とは法律行為を意味していますので、本人の介護や世話などは含まれていません。

それでは具体的に後見人の受任後の時間経緯にそって説明していきます。

【1. 最初】

・本人の資産状況(預貯金や不動産、負債等)を正確に把握し、今後の生活プランを作成し、課題を抽出し「後見計画書」に反映させる。
・法務局に「登記事項証明書」の発行を依頼する。
・取引銀行に後見人の届けを行い、取り扱いを後見人に変更する。
・行政機関や年金事務所等に後見人届けを行い、送付先の変更届を提出する。
・就任1か月後迄に、家裁宛「後見計画書」を提出する。同時に本人の親族宛に後見就任の挨拶状を送付し理解を得ておく。

【2. 日常的】

・施設や病院等の請求書に基づき支払手続き。不明な事項は請求先に確認する。
・記帳(通帳)を行い、入出金のチェックを行う。
・行政からの通知文書等に目を通し、理解し何か課題がないか検討する。
・本人や関係者を定期的に訪問し、本人の生活ぶりや様子をチェックし、何か手当の必要性があるときは関係者に相談する。
・発生した事象等を経過記録する。

【3. 特別な時】

・施設入所による、自宅の売却や賃貸アパート等の処分を家裁に申し立てをする。
・施設入所等による荷物什器等の廃棄手続きをする。
・自宅や賃貸アパート等の修繕が必要な場合、施行業者と契約する。
・入院手続きや施設入所にあたり契約締結を行う。
・介護サービス等の契約・変更・解除を行う。
・介護支援計画や障害支援計画のカンファレンスに参加する。
・相続の承認・放棄/贈与・遺贈の受諾/遺産分割等の諸手続きをする。
・本人の財産に関する訴訟行為(個人破産手続き等)をする。
・税金の申告と納付を行う。
・家裁への定期報告(1年毎)と報酬申立をする。

【4. 最後に】

・死亡時、親族に連絡する場合がある。(本人が親族と疎遠な場合)
・死亡時、親族がいない場合など、火葬や納骨の手続きを行う。(応急処分手続き)
・残された財産を相続人に渡す。または相続財産管理人申し立てを家裁に行う。
・施設などに残された荷物等を親族に渡す、または後見人が廃棄手続きをする。
・後見終了の申立を家裁に行う。

 【補足】 ・上記1に関して。本人の生活状況が分からない状況の中で行うので、関係者や親族等への面談等を行い本人の情報収集にあたる期間となり、今後の後見業務を行う上で大切な1か月となる。 ・上記4に関して。後見人の職務は本来であれば本人が死亡と同時に消滅するが、親族の支援を得られない等により、後見人がやむをえず火葬や納骨、また相続財産管理人の申し立てを行う場合がある。私の場合の多くは、これに該当する。  

家裁が後見人に選択する専門職 (私観)

 ・弁護士/司法書士   後見申し立て時に、親族間に紛争がある人や多少複雑な法的な課題がある人、または不動産を抱えている人であり、身上配慮など福祉的な必要性よりも優先される人。

 ・社会福祉士  本人に身上配慮など福祉的な必要性が高く、財産額や親族間の紛争より優先される人。  

なお、上記のように第三者の専門職後見人をつけることで、本人に後見人に支払う報酬が必要になってきます。報酬額は家裁の決定事項ですが、基本は25~30万円(年間)であり、付加業務(不動産売却等)を行った場合は増額されることになります。