後見人等の制度とは

12/20/2022

社会福祉士 北村弘之 

後見人制度とは

判断能力に不十分な人の人権を擁護するための制度であり、その人にある価値観や幸福感を形にする自己決定権を支える民法なのです。

具体的には認知症の人、統合失調症を患っている人、知的障がいの人が主で、その多くは身寄りがなかったり、また親族の支援がえられない人です。R3年末現在全国では約24万人が後見人等の制度を利用しており、毎年増加傾向です。支援別では認知症64%、知的障がい者と統合失調症がそれぞれ9%の割合になっています。また、家庭裁判所への後見申し立ては、R3年には39,809件となっています。(数字は最高裁判所資料より)

その支援を行う人を後見人等と言いますが、後見人等になる人は「家庭裁判所への申し立て」によって受任した親族や専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士等)がなり手になります。10数年前は、親族による後見人が圧倒的でしたが、親族間のもめごとや、市区町村の申し立てが増えたこと、また適切な財産管理・不動産管理等などの必要性から、現在では専門職が約8割を占めるようになりました。

後見人をつけることによって

  本人の判断能力が衰えたことにより、預貯金の出し入れ額を間違えたり、支払手続きができなくなったり、また介護サービスや施設入所の手続きや支払手続きができなくなります。また自宅にきた訪問販売の商品をだまされて買うこともあります。このような預貯金の出し入れや契約を後見人が代理人としておこなうものです。また、後見人が就くことで、だまされた商品を「取消権」で売買行為を無効にすることができます。このようにして、本人に不利益のない生活が送れることは後見人の役割です。

  従来、家族間で支援してきたことを、社会的に核家族化になったことで、いわば社会的な公器として後見人が「人」を護っていく役目を負っているのです。また、後見人は、その人の「最善の利益」になる手段や方法を示し、支援することにあります。財産の管理のみならず、本人の嗜好等を考慮して預金等を上手に利用してもらうことも大切な行為の一つなのです。

私の取り組み方針です

 民法の成年後見制度(2000年施行)には次の理念が掲げられています。

 ・自己決定の尊重・・・本人の意思を最大限尊重するため、後見人は本人の力を引きだすことが必要となります。

 ・残存能力の活用・・・・本人が持っている能力を後見人は活かすこと。

 ・ノーマイラゼーション・・・・障害のある人も、可能な限り障害のない人と同様な生活条件で過ごせるように 後見人は工夫する。  

上記の理念をもとに、私の取り組み方針を参考迄にご紹介しましょう。

取り組み方針

① 先が読めるように最善を尽くす

 本人に関係するあらゆる人と直接面談して、これまでの経緯や状況を聞くことにしています。特に「生育歴・家族環境」を確認しています。直接面談できない場合は電話やメールで連絡をとり、今後の対応策を図っています。

  ・医療面/介護面・・治療方針と介護方針等について、医師やMSW、ケアマネジャーとコンタクトを図る。

  ・行政面・・・本人に必要な行政支援(補助)制度の確認と実施展開を図る。

  ・資金面・・・・・収支表を作成し今後の適切な生活費を図る。 

  ・住むところ・・・・本人の今後の身上体調等を考慮して、住い等に関しケアマネや病院関係者、施設支援者と具体的に相談する。

② 関わりのある人と連携

 後見人は一人では何もできません。また何が本人にとって一番よいかは分かりません。本人そして本人と関わりのある医療や福祉職等の専門職等と連携プレーしています。

 ・本人に関わってきた人は多くいる (親族、福祉、医療、行政関係者)

 ・意思決定の段階に関係者に参加してもらう。

 ・相続や不動産売買等、福祉や医療以外の専門職と自己研鑽のための交流・研修に参加する。

③ 本人が意思決定できるように支援する

 ・本人の権利擁護を護り、本人が意思決定できるようなアプローチを図っています。

 ・そのために、できる限り直接本人の声を聴き、今どうしたいのかを探ります。もちろん本人との信頼関係を築くことが先決です。同様に、本人の周辺の関係者の声や考え方を聴き、文書記録にて確認することにしています。

 ・本人の強みを発掘し、それを活かすことができないかを関係者に打診するようにしています。

 ・後見人として、自分の行為が正しいかを適宜振り返りを行っています。そのために「経過記録」を残すことが大切です。

私は、後見人等の受任経験は10年ほどですが、これまでに累計23件を担当しています。(現在は13件受任中)。高齢者で認知症の人が主ですが、30歳代50歳代の人を受任したこともあります。