「先々の住まい」 5/8

2022/7/20(No.5/8)

—70歳代前半の人が検討してほしいこと—

社会福祉士 北村弘之

6. 住み替え先の選定材料と選択

この章では、老齢期を自宅以外で過ごすための「住み替え先」の選定材料と選択肢についてです。

住み替えとなりますので当然費用はかかります。まず検討することは本人の「手持ち資金」と「年金額」で可能な住み替え先を見つけることです。手持ち資金は入居にあたり必要な一時金として必要です。また年金額は毎月の入居生活費をまかなえることが理想です。

一時金は、部屋代の前払い金という性格があり、月々の部屋代は少なくなる仕組みです。前払い金は5~10年の期間で償却としている有料老人ホームがあります。逆に、一時金は不要とし、毎月の部屋代に組み入れているところもありますが月々の部屋代は高くなります。

先々の費用を工面することになりますので、5年間あるいは10年間の総費用を計算して入居先を検討することが必要です。

このような仕組みをしっかりと理解した上で住み替え先を検討していくことになります。

次に、入居する人の持病等の疾病をどこまでカバーしてくれる施設かどうかです。老齢期には慢性的な疾病を抱える人も多く、この状態で入居を検討することになります。施設内に看護師を常駐しているところもありますが、そうでなければ、かかりつけ医が近いところの施設を選ぶことを検討します。疾病を抱えている人は、少なくとも看護師が常駐の施設がよいでしょう。看護師は日中のみで、夜間は不在でオンコールの施設もありますので、住み替えの際にはご自分の疾病をどこまでカバーしてくれるか確認したほうがよいでしょう。

次は相性です。有料老人ホームとサ高住ともに、ご本人のこれまでの生活感やスタッフとの相性、そしてすでに入居されている方との雰囲気が果たして合っているかは、是非ご本人が見学訪問して確認することが大切です。見学しないで、突然入居となり、周りの入居者を見て自分より介護度の高い人がいるとショツクを受けることがあります。そのようなことがないように、入居検討時には家族と一緒に訪問先で「昼食」をとることで、食事の味、そして施設内の雰囲気を感じとっていただいた方がよいでしょう。入居してから雰囲気や相性が合わないといって、他の施設に移るということになる人もいます。

入居者や家族にとって見えない部分は施設を運営する事業体の経営事情です。一般的に言えるのは、入所率は80%以上であり、そこで働く人が活き活きしていることです。入所率(満床)が高い施設は、そこに働く人のサービスの質は高く、居心地のよいということにつながります。また働く人の離職率を確認することもよき指標となります。これらは財務諸表から見えない「品質」なのです。是非訪問時の「感覚」も敏感に働かせることが必要となります。最近は、有料老人ホーム等の経営の行き詰まりで倒産などが見られ、同業他社へ引き継いでいる施設も出ています。

参考:住み替え先の選定材料と選択

参考:住み替え先の選択肢フロー

 まずは、手持ち資金と年金額、疾病の種類、そして家族の意向考慮することが大切となります。

参考:施設選びチェツク項目

 下記のように11項目掲載していますが、入居される人にとって「重みのある項目」からチェツクしていくことになります。例えば、資金に余裕のある方は、サービス内容や食事内容、利便性を考慮していくことになります。

参考:施設ごとの費用と介護度

公的施設を含めて、老齢期の施設を横軸に介護度、縦軸に費用をイメージとして、各施設がどのような位置にあるかを示したものです。