「先々の住まい」 1/8

70歳代前半の人が検討してほしいこと

2022/3/20(No.1/8)

社会福祉士 北村弘之  

はじめに

最近、私の周りで、新たな暮らし方をスタートさせた後期高齢者のお話を聞く機会が増えました。

引き続き自宅で過ごすことにして住みやすいようにリフォームした方や、家の管理が大変になり「サ高住」に住み替えた方、妻に先立たれて一人暮らしになったので「グループリビング」に住み替えた方などです。

私なりの後期高齢者の過ごし方や、友人、知人のお話を参考に、まず始めに「人とのつながり」の大切さを述べさせていただき、次にそれを根底に「先々の住まい」について、いくつか紹介させていただき、皆さまに検討していただければ幸いです。

  1. 「人とのつながり」を大切に

家族の成長とともに、子供は親から離れて別に世帯を持ち、親世帯は自由を謳歌しながら暮らしたいと願いつつ、夫婦で暮している時は日常生活に追われながらも会話もあり、日々過ごすことができます。しかし、配偶者が亡くなり、独りになった場合はどうでしょうか。

私は後見人の仕事を通じて「認知症」や「精神疾患」のある方の生活支援をしていますが、全員一人暮らしです。そのような実情をみていますと、「お金」や「健康」はもちろん大事ですが、「何気ない人間同士の付き合いや会話」が生活を支える大きな力となっていると思います。ちょっとした会話によって、気持ちが前向きになったり、笑顔がでたり、会話がなくてもいるだけで安心感や存在感があるのではないでしょうか。

私の経験では、人間は(夫婦間もそうです)、他の人にかまわれたくなく一人でいたいこともあります。しかし長続きしません。やはり、何気なく人の輪の中に入っていき、何気なく話をしたくなるものなのです。

一人暮らしで、自宅で介護を受けている方が、ヘルパーさんやデイサービスで人との触れ合いを楽しむ方がいらっしゃいます。自宅から「サ高住」や「老人ホーム」に住み替えた方は、共に暮らす方々とのコミュニケーションを大切にしていることでしょう。

ご自分が選んだ「住まい」の中に、「人とのつながり」が持てることが肝になると考えます。

日常生活に支障なく暮らせる年齢期間を健康寿命といいます。男性72歳、女性74歳と言われています。というわけで副題にあるように、70歳以上の方には、自分に適した住まい方を是非検討された方がよいのではないかと提案します。その理由の一つ目は、高齢になると生活環境(場所)が変わることで戸惑いが出ること。二つ目は、多くの人は体力がきつくなり荷物や書類の整理が難しくなってくること。そして、三つ目は判断能力が衰えていくことで思わぬミスをして、生きていくのが困難な状況にも陥りかねないことです。

ご自分に適した「住まい」を後期高齢者(75歳)になる前に検討されることをお勧めします。