介護施設の負担額はますます増加 (1/4)

–2021年 介護保険改正—(1/4)

2021/11/20

社会福祉士 北村弘之  

日本社会は長寿=高齢化が進み、介護を受けて生活する必要な人が増えています。それを社会全体で支えるのが2000年に施行された「介護保険制度」です。20年経過した介護保険法は3年毎に見直されていますが、介護保険の利用者の増加で財政は圧迫され、65歳以上の第一号被保険者にとってじわじわと金銭的負担が大きくなっています。今回は2021年に施行された改正点を生活者目線の「金銭的」な面に絞り説明します。

主な変更点

1.年金額は変わらずも、保険料は増加(65歳以上)

2.施設入所者は、預貯金額基準額の限度額引き下げにより費用負担が増加

3.高額介護サービス費の上限額の新設(年収770万円以上)

4.参考 :  後期高齢者保険医療(75歳以上)の窓口自己負担額増加

以下、主な変更点について記します。

1. 年金額は変わらずも、保険料は増加

65歳以上(第一号被保険者)の介護保険料は、市区町村毎(=保険者)に決まり、前年の世帯の課税状況と本人の収入等により6月頃に新しい保険料が市区町村から通知されます。

基準となる国の保険料段階は9段階ですが、この保険料段階は各市区町村によって決めることができ、例えば横浜市では16段階と細分化されており、本人の所得に合わせた、きめ細かな保険料となっています。保険料の段階差は所得の公平さをもたらすもので、収入が多い人には応分の保険料を負担してもらうための政策となっています。

また要介護認定者数は毎年増加しており、介護従事者への介護報酬が上がっていますので、今年は多くの市区町村で保険料は引き上げとなっています。ちなみに、介護保険発足時の保険料は全国平均月額2,911円であったものが2021年には6,014円となっています。

ちなみに横浜市の基準額は年間78,000円ですが、年金(のみ)250万円の人の保険料は年間85,800円となっています。健康保険料と合わせると、夫婦二人では年間20万円の負担になる家庭が続出しそうです。

また、介護需要が多くなり介護保険料はますます増加になり、3年後の介護保険法改正では、現在40歳以上の保険料徴収は30歳以上になることも考えられるでしょう。

2.施設入所者は、預貯金額基準額の限度額引き下げにより費用負担が増加

施設に入所(特養と老健等)している人の場合、「食費」と「居住費」は自宅で介護される人との公平さから原則全額本人負担となっています。しかし所得の少ない人に対して、本人とその世帯等の所得に応じて軽減措置(補足給付)が図られています。これを「介護保険負担限度額」といいます。

今回の改訂では、預貯金額の限度が大きく引き下げられたため、従来第3段階の人が第4段階となり、軽減措置の対象から外れることになり、負担額が増加することになりました。この8月利用分から適用となっています。

(要点)

・補足給付の預貯金要件は、従来単身1,000万円以下(夫婦で2,000万円以下)であったものが、2021年8月分より大幅に制限されました。(下記 表)

・食費の負担限度額の見直しにより、第3段階②の人は、2倍の1,360円/日となりました。

一般的な年金受給者の例ですと、単身で収入は年金のみの250万円、預貯金額が600万円ある人は、第4段階基準となり、食費と居住費の軽減措置はなく、これらは施設との契約金額となります。特養と言えど、介護サービス費を含むと月額15~18万円になります。(ユニット型の個室の場合)

 厚労省のバンフレットをもとに下記を作成しました。

■低所得者への補足給付の認定条件に、預貯金額(※1)の見直しがありました。従来の単身1,000万円の基準は650万円に見直されたため(下表)、年金等の収入が少ないにも関わらず、補足給付の対象にならない人が増加します。

■2021年8月から、在宅で暮らす方との食費・居住費(部屋代)に係る公平性や負担能力に応じた負担を図る観点から、一定額以上の収入や預貯金をお持ちの方には、食費の負担額の見直しがありました。

なお、第4段階の該当者(軽減措置のない人)は、施設事業者との個別契約により食費を支払うことになります。国の基準額は1,445円(日額)となっています。

※1 預貯金とは、普通・定期預金の他、有価証券、貴金属(時価評価可能なもの)、投資信託、現金(タンス預金)も含まれます。現金は自己申告です。

3、4は次回となります。