おひとり様の老い支度 ⑫ 任意後見制度と法定後見制度

今回のテーマ 「任意後見制度と法定後見制度」 12回目 (完)

発行3/25/2021

社会福祉士 北村弘之

 任意後見制度は,本人が十分な判断能力があるうちに,将来,判断能力が不十分な状態(いわゆる認知症や精神疾患等)になった場合に備えて,あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に,自分の生活,療養看護や財産管理に関する事務について、代理権を与える契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。いわば、将来の老いの不安に備えた「老い支度」の制度なのです。自己責任で、将来困らないように備えておくことなのです。

また、成年後見人制度は、認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方に対し,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりします。ただその必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合もあります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあう恐れもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。

12回目 任意後見 1

おひとり様にとって、判断能力がある段階では、「任意後見制度」を利用することになります。その多くは、「移行型」といって、契約の段階では信頼できる人と「財産委任契約」と「任意後見契約」の両方を結んでおいて、判断能力の低下が見られた場合、家庭裁判所に「任意後見」に移行するものです。

12回目 任意後見 2

財産管理契約の中では、どのような代理行為を委任者に委託するかを決めておくことが大切です。例えば、通帳の管理保管は本人が行い、入出金等は委任者が行うなど明確に決めておくことなどです。また、身上監護のひとつとして、行政の窓口手続きを代行することを契約文書の中に明記することもよいでしょう。これらは、いずれも本人が病気がちで外出がままならない際に応ずることができます。

一般的に、財産管理契約と同時に、死後事務委任契約や遺言書を作成することが現実的です。いわば生前契約ですので、おひとり様にとって頼りになる支援のひとつになります。途中で委任者に任せられない時になった際には、契約破棄することができるように条文に加えることです。

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