おひとり様の老い支度 ⑧ 延命の意思表明

今回のテーマ 「延命の意思表明」 8回目

発行11/25/2020

社会福祉士 北村弘之

栄養と生活の改善により、寿命は飛躍的に伸びました。特に医療の進化には著しいものがあり、外科手術の施しや経管栄養により数年は延命が可能となっています。しかし、突然やってくる事故や病気(入院)にはおひとり様ではどうしようもありません。意思の確認ができない状態で救急搬送されると、医療機関の多くは延命措置が講じられるからです。たとえ本人の意思とは違っても訴える手段はすでにないからです。

おひとり様の場合、万が一の場合に備えて、自分の意思を何かしらの手段で伝えておくことが必要となります。伝えておいても、いざというときにその人がいない場合はどうしようもありません。いつも持ち歩くものの中に、「いざという時の措置(※1)」について記したものを持ち歩くのもよいでしょう。

さて、重い持病を持つ人は、予め医師など関係機関との打ち合わせで、自分がどのような延命を受けるか受けないかを意思表示する機会は何度かやってきますが、そうでない人は、一度立ち止まって家族や知人と話してみることが大切です。延命措置だけをテーマにすると話しづらいと思われますので、テレビの番組などで話題になった際に家族間や知人と自分の意思を話してみることが良いでしょう。そうすることによって、自分の考えを整理することができます。また他の人の考えを参考にすることもできます。

現在、患者(疾患のある人)と医師間で利用されている「意思表明書」を見ると、人工呼吸器を付けますか? 点滴を行いますか? 等の医療専門用語が出ており、一般の人にはそれがどのような影響になるか説明を聞かないと選択できない状況です。やはり、疾病等による入院や通院にならないと「意思表明」できないのが現実的ではないでしょうか。

8回目 延命の意思表示 1

 

 

 

 

 

 

 

2018年厚労省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版を発行しました。前頁はその「プロセス」を図式化したものです。患者の意思が確認できるか確認できないかによってそのあとのプロセスが異なりますが、本人を含む関係者と今後の医療とケアの方針を決定するものです。(これらをACPと言っています。Advance Care Planning  愛称:人生会議) 今後「人生会議」の活用が多くなることが期待されます。

ただ、ACPにおける意思表示は、症状が悪化した場合や身体機能の低下があった場合に活用されることで、患者である本人の考えを導き出すことと思われます。もちろん医療関係者や他の関係者等と同じテーブルでの打ち合わせになりますので、関係者間での共通の意思は確認されることにつながります。

また、「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定のガイドライン」は2019年に発行されております。おひとり様にとって、このガイドラインを一読されたほうがよいかと思われます。このガイドラインの目的は、身寄りがない場合にも医療機関や医療関係者が患者に必要な医療を提供することができるよう、また患者側も身寄りがなくても安心して必要な医療を受けられるようにガイドラインを作成したものです。

最近、各市町村の中では「救急医療情報セット」というものの提供があります。特に持病がある人は、冷蔵庫の中に「緊急対応連絡」を筒にいれておく方法を提供しているところもあります。お住まいの市町村のHPで確認されたらと思います。

この仕組みがないところでは、「情報」を部屋の壁に貼っておくこともよいでしょう。

※1 各市町村の「救急医療情報セット」の中にあるシートを利用することがよいでしょう。

8回目 延命の意思表示2

【救急医療情報セットとは】

本人の、かかりつけ医や薬情報、また延命等の考え方を書いたものを筒(中央)に入れ、その筒を冷蔵庫に格納しておきます。救急隊が自宅に入った際、ドアにその印(左側のシール)を貼ってあることを確認することで、冷蔵庫の中に「救急医療情報セット」があることを認識、どのような治療延命等をすることにつながります。

印刷はこちら⇒老い支度 おひとり様 「延命の意思表明」⑦