おひとり様の老い支度 ⑥ ひとり暮らしの住まい方

今回のテーマ 「ひとり暮らしの住い方」 6回目

           発行9/25/2020

社会福祉士 北村弘之

今や日本社会の家族構成の多くは、子どもたちとその親(二世代)で過ごしている「核家族化」になっています。そして子どもたちが独立すると二人暮らしになってしまい、そして配偶者が亡くなると一人暮らしになっていきます。いわゆる独居生活となります。また一方、未婚者は増え続け、2015年の実績(国調査)では50歳時の男性のそれは23%、女性も14%となっており、この傾向は増えてくるものと推測されます。

老い支度には「こころ、からだ、すまい、おかね」がキーワードとしてあげてきました。今回は、その「すまい」です。住いは人にとって安全で安心して過ごせるプライベート空間です。しかし老後の一人住いには高いハードルがあることはご存知でしょうか。

一つは、賃貸の場合、保証人が必要となります。これは何かあった際の連絡先である身元保証人、そして家賃を滞納した際の連帯保証人の2つです。二つ目は保証人を確保できたとしても、高齢時には孤独死等が考えられることから、賃貸業者が部屋を貸さない場合があるのです。前者の保証人が必要な際には市区町村に相談をしたり、保証をおこなっているNPO法人や家賃保証会社に依頼したりする方法があります。

そこで、2000年代の初めに「高齢者優遇賃貸住宅」や「高齢者専用賃貸住宅」といったものが国によって制度化され、さらに多くの高齢者介護化の対応を図るために2013年には「サービス付高齢者賃貸住宅(サ高住)」が法整備され民間企業によって提供されています。現在日本全体で25.4万室(‘20/2末)が提供されています。このサ高住の大きな特徴は、基本は「住まい」の提供であり、加えてサービスとして「安否確認」、「生活相談」ができる窓口があるということです。

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昔的に言うと、長屋に住みながら大家が時々声をかけたり(安否確認)や悩みごとを聞いてくれる(生活相談)ものです。高齢者向けの住いですので、バリアフリー対応で小さなキッチンやバス・トイレも部屋にあります。食事作りを面倒な人には、住宅全体で用意してくれるところもあります。

ただ、急激な設置増加があり、運営会社の中でも、運営の程度に差があるので、訪問して実感を確かめてみましょう。例えば、重い介護の人を受け入れているサ高住もあり、健常者である人が一緒にいると気が滅入ってしまう場合があります。

ちなみに、有料老人ホームには「介護型」の他に、全体として数は少ないですが「住宅型」といった有料老人ホームもあり、サ高住と同様なサービスを提供しているところもあります。

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有料老人ホームやサ高住の多くは民間が運営しています。入居時には、自分や親族知人の目で自分にあっている施設かを確かめしょう。最近、経営破綻になる施設もありますので、「重要事項説明書」や厚労省のHPから「職員の退職率」の多さなどを確認することが大切です。

図の見方は、主に介護施設を中心にしたものです。矢印が上部にいくほど費用が高くなり、右側に行くほど医療との関りが高くなることを表したものです。

また、持ち家でお住まいの方は、おひとり様になっても住み慣れた自分の家を離れることができないようです。その際検討しておくことは70代、80代と体力が落ちていくので段階に応じて、修繕していくことです。例えば、和室と廊下の段差、ベランダと部屋の段差などは、転倒しない工夫、つまりバリアフリー化に取り組むことが必要となります。高齢者で転倒する場所の70%は「自宅の中」なのです。

最近、銀行の広告で「リバースモーゲージ」という言葉をよく聞きます。これは持ち家を担保に金融機関からお金を借り、有料老人ホーム等に入所費用に充てるものです。契約者が存命中は利子を返済し亡くなった後に土地と建物が売却され元金の返済に充てられるものです。

また、最近は「シニア住宅」として所有権付きマンションが販売されています。必要であれば、食事を食堂で提供してくれる民間企業も出ています。

 

いずれにしても、本人の生き方が住まい方を選択することになるでしょう。判断能力がまだある80歳になる前には住まい方を決められたらよいでしょう。

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