おひとり様の老い支度 ⑤健康寿命とともにやってくる介護事情

今回のテーマ 「健康寿命とともにやってくる介護事情」 5回目

 発行8/25/2020

社会福祉士 北村弘之

生活が不自由なく過ごせることに越したことはありません。しかし、日常の生活を送るのに何かしらの支障が発生する健康寿命の到来は遅からず誰にもやってきます。前回でご紹介しました「健康寿命」を思い出して下さい。健康寿命とは、日常生活に不自由なく過ごせる年齢です。2015年の厚労省の調べては男性72歳、女性は75歳です。平均寿命はそれぞれ82歳、87歳となっており、健康寿命と平均寿命の間は10年ほどです。この期間に徐々に誰かに支援をお願いするする生活となっていくのです。

世界でも最速で高齢化が進んでいる日本では、1980年当時、100歳以上の人は約千人でしたが、約40年後の2019年には7万人を超え、これまでに経験したことのない超高齢社会に突入しています。ましてや現在50歳代の人の30年後の2050年では、寿命はさらに延び、社会そのものの変化とともに個人の生活スタイルが大きく変わっていくことは必然です。

1990年代後半、政府は来るべき日本の高齢化社会を大綱にまとめ、2000年には日本の社会保障制度の5つ目となる「介護保険制度」が施行されました。

現在、基本65歳以上の人が全員介護被保険者となりますが、介護サービスを受けるには「市区町村」に申請する必要があります。そこで、認定を受けることで初めて介護を必要とする人に各種サービスが提供されることになっています。下図の流れを参照して下さい。

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介護とは、何らかの理由で生じた心身の障害により、日常生活面に支障をきたす利用者に対して身辺の支援や世話を行うことです。例えば、介護サービスのひとつに、ヘルパーが自宅に訪問して生活援助をしてくれるものがあります。

原則として利用者が一人暮らしか同居の家族が障害や疾病等のため、家事を行うことが困難な場合にサービスが受けられます。このような利用者への身体介護ばかりでなく、料理をし、掃除をしてくれる家事支援のサービスもあります。

介護保険サービスは、おひとり様が安心して生活を送ることができるものですので億劫がらずサービスを受けてみましょう。

また、国の介護保険制度のサービスの他にも、お住まいの自治体やボランティアが独自に提供しているサービスもありますので、市区町村に事前に確認することがよいでしょう。下図の例では、介護保険外のサービス欄に記載されたものです。

 

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また、介護サービスには、大きく自宅で介護を受ける「在宅サービス」と施設に入所して介護を受ける「施設入所サービス」があり、サービスの内容が異なります。

さて、介護認定や介護サービスを受けるための相談窓口はどこにあるのでしょうか。介護認定や相談窓口は「地域包括支援センター」というところです。これはお住いの中学校区に一つありますので、事前に足を運んで確認しておいた方がよいでしょう。

また、介護サービスを受ける際にキーマンとなる人を「ケアマネジャー」と呼びます。このケアマネジャーは、介護プランの時間割を作成・見直しをしたり、またサービス事業所間の連絡調整もおこなってくれる人です。介護だけでなく、車椅子の手配や住宅の改修といったことも相談できます。

おひとり様で一番困るのは、突然のけがや病気で入院生活を送ったあとの退院後の生活です。このような場合、病院には医療福祉相談室がありますのでこちらに相談してみてください。いずれにせよ、一人で悩むのではなく、いろいろな社会資源をうまく利用することで自立していきたいものです。

現在50歳代の人が果たして30年後に必要な介護サービスを受けられるか、甚だ不明なところがあります。それは、介護する人の絶対数の減少と介護保険制度の維持が不確実だからです。つまり、介護崩壊になっているかも知れません。それに備える意味でも、自らが自らを守ることが大切です。

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