行ってみたい美術館

7/5/2020

北村弘之

 日本には、約6,000に及ぶ美術館や博物館があると言われています。東京国立博物館(トーハク)ような、日本や東洋の文化財や美術品などを収集保管し、それを一般の人向けにも展示している大型のものから、個人の作家品のみを収集・展示している独自の美術館、また財産をなした人が収集したものを後世の人のために展示している美術館等様々あります。目的をもって訪れる人は、特別展示してあるものを見てそのひと時を満喫する人もいるでしょう。また、訪問先でぶらっと訪ねた美術館に心を奪われる時間を過ごす人もあるでしょう。

さて、今回は独自性のある2施設をご紹介しましょう。

【江之浦測候所】

施設名に測候所とありますが、気象等を測定している場所ではありません。施設パンフレットに作者はつぎのように設立の趣旨を書いています。「古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。そしてそれがアートの起源でもあった」

場所は小田原市の根府川駅に近い、太平洋の海原を見下ろす小高いミカン畑を切り開き、創り上げた施設です。丘には文化的な石舞台、光学硝子舞台、茶室、庭園、門などを日本各地から集めており、現在では継承が困難になりつつある伝統工法を再現して移築構築されています。

特に、趣旨にあるように、春夏秋冬の時間を知ってもらうため、春分と秋分の日しか見られない「日の出」の構造物、夏至の時の「日の出」の棟(100mギャラリー)、そして冬至の「日の出」の棟(光遥拝隧道)があります。古代人が時間を知る上での大切な原点を構造物で表現しているのです。この構造物からみる太平洋に何とも言えない自然のエネルギーを感じ取りました。

まさに、創設者の杉本博司氏の想いがこもった「心落ち着く空間」でした。

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 夏至の時の遠く「日の出」が一直線にみられる100mギャラリー

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 冬至の時、日の出が一直線上に見られる「遥拝隧道」

 【薮内正幸美術館】

ここは、日本では唯一の動物画の美術館で、美術館の名前のとおり薮内正幸氏の細密動物画の展示作品であふれています。場所は山梨県北杜市の山合のひっそりとした中にあり、きつねや鹿が出てきそうな場所です。木のぬくもりを感じる建屋の中には、作家の描かれた細密画の作品や動物の表紙で飾る絵本が多くあり、動物画一色です。作品の動物画は、テレビや新聞広告で賑わっていたこともあり、年配の人には見覚えがあるかと思われます。また絵本の表紙を飾る動物画が見て、この絵本は小さいとき読んだことがあると思われる人もいることでしょう。

本当に小さな美術館ですが、係の人との会話を通して、動物画を見るひとときもよいものです。

薮内絵本

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