おひとり様の老い支度 ③お金と長生きリスク

今回のテーマ 「お金と長生きリスク」 3回目

          発行6/25/2020

社会福祉士 北村弘之

1回目のテーマの中で、老い支度を考える上で「こころ、からだ、すまい、おかね」がキーワドと記述しました。今回は「お金」のことです。これは平均寿命が延びたことによる長生きリスクと大いに関係します。

現役時代は、安定した給料収入があり、入ってくる分支出も多くなっていきます。特におひとり様は、自分で稼いだものを自らが使えるということから、給料等を旅行や趣味といったレジャー費に支出することが多いようです。もちろん倹約している方もあるかと思います。しかし、定年後のセカンドライフにおいてそのようなわけにはいきません。定期的な収入は年金が中心となるからです。

ライフプランセミナーでは、参加者に「ねんきん定期便」を持参していただきますが、その第一声は「年金額はこんなものですか?」という愕然とした表情です。当然現役時代の収入から見ると半分以下だから驚きは当たり前です。まだこの段階で気がついた人は、今後の対策をとることに目覚めることができたからよいものです。

セカンドライフ時代に入ると、健康保険、介護保険といった社会保障費は、現役時代の会社の半額負担と異なり全額個人負担となります。次に税金です。年金も所得税の対象ですので、住民税と合わせた支出となります。

セカンドライフの生活を考える上で、大切なことは、現在の収入(殆どは給与所得)と、支出内容と金額(食糧費、住居費、交通費、レジャー費、ローン等)を一度明確にすることです。そして、将来の収入である年金額と照らし合わすことです。

よく言われる、「マネープラン」の作成です。支出項目の中心での検討項目は、「ローン返済」、「生命保険」と「リフォーム関係」の費用です。定年後の70歳過ぎにローン全額返済といったものがあれば期間を前倒しすることを検討しましょう。また生命保険も同様です。おひとり様の死亡保険は誰に保険金を渡すのでしょう。

3回目 長生きリスク1

 

そして持ち家住まいの人は、住宅設備のメンテナンス費用を計上していくことも必要です。一時的にせよ、何十万円という単位で費用が発生します。

前頁の図は「65歳以上のひとり暮らしの暮らしぶり」を収入と支出額を表しています。総務省の統計では、毎月3.5万円が不足しており、平均寿命の85歳まで生存すると単純計算852万円不足し、それ以上長生きすると1,277万円不足するとあります。これはあくまで日本国民の統計的数字ですので、おひとり様は自分の「マネープラン」を作成して不足額を算出してみましょう。不足額がわかったら、今からどのように対応したらよいか検討してみましょう。定年時の退職金もあります、また継続して働くことで収入をえることもできます。また現役時に蓄えた預貯金や投資もあるでしょう。不安を消すには、自分なりに納得する作戦を立てることが早道です。リタイア後では遅すぎます。

ある人から聞いた話です。年金暮らしになった途端、極端に生活を縮小させてしまった人がいました。理由は「老後のために!!」 今、まさに老後なのですから、これまでの預金で生活費を補填して、収入が少なくても少ないなりに、その人らしい生活を送ればよいのにと思ったことがあったそうです。そして、その人が急死されたときには1000万円を遺して逝かれたのです。その人は友人に新聞の購読は止め、テレビだけにしたこと。そして体力が無くなったので旅行は止めたとのことを話していました。新聞は脳を活性化してくれる材料です。また旅行は季節を感じたり、美味しいものを食べたりできます。その人はそうしているうちに、こころの元気が無くなったのではないでしょうか。

また、現在の現役世代の年金受給開始年齢は65歳です。定年時期が60歳であれば、受給開始迄継続して働くことも選択肢になります。これはお金を得ることばかりでなく、現役時代と同じように日常的な「話し相手」の存在があることも重要な一部となります。下記図は、第一生命の谷内陽一氏の発表したものを編集したものです。この中には、60歳定年後も働くこと、また65歳からの年金受給開始時期を繰り下げ、70歳以降にすることで40%の増額分を得ることをあげています。(注意:繰下げを行うことで、繰下げ後の年収が一定以上になると健康保険料、介護保険料、住民税が予定より上がることがあります) 平均寿命はますます延びていきます。誰も自分の命の限度はわかりませんが、長生きリスクを改めて考えてみましょう。

自助努力することで新しい道が開かれてくることでしょう。

3回目 長生きリスク2

印刷はこちら⇒老い支度 おひとり様 「お金と長生きリスク」②