山と水の美術館巡り

(MIHO美術館と佐川美術館)

 4/9/2019

北村社会福祉士事務所

代表 北村弘之

この春、近江(滋賀県)の美術館を巡ってきました。ひとつは、”山の中”のMIHO美術館、もうひとつは、琵琶湖大橋の近くの”水の中”の佐川美術館です。ともに、私設の美術館ですが、嗜好をこらした建築様式と展示内容でした。

MIHO美術館は、琵琶湖線JR石山駅からバスで約50分の山深い中に作られており、宗教法人が1997年に開設したものです。建築にはパリのルーブル美術館のガラス館を設計した人が携わり、山の頂での美術館の配置と言い、展示室と言い豪華絢爛なものでした。その回りを松林が囲み日本的な風情もあり、苦心して作られた建築の髄が見られました。また美術館に至るアプローチは桜並木で圧巻の景色でした。(4月中旬が見ごろのようです) 今回の特別展では、世界に3点しかない国宝「耀変天目」のうち、大徳寺所蔵ものの展示があり、多くの客が見入っていました。私にとっては、静嘉堂文庫美術館所蔵のものを見ているので、あとは藤田美術館所蔵の「耀変天目」を見ることで3点全部を見終わることになります。

山の中にある美術館ですので、景観を損なわないように展示室の約8割が地下にありました。その地下には、エジプト、西アジア、ギリシャ、中国の優れた大小の展示物が、広い空間を贅沢に利用して配置されているのが印象的でした。

今回の特別展では、大徳寺の塔頭の一つ「龍光院」の耀変天目茶碗(国宝)の他に、門外不出の所蔵品約展示物150点が展示されていたため、多くの人々で賑わっていました。私も約3時間の滞在時間となり、出口の長いトンネルを歩きあとにしました。

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もう一方、佐川美術館は琵琶湖駅JR守山駅からバスで25分。琵琶湖のイメージを活かしてか、展示館の周りは広大な池を配置しており、まるで美術館が水面上にあるかのように思える建築物でした。常設展では、彫刻家佐藤忠良氏の作品、被爆作家の平山郁夫氏のシルクロードの作品が展示してありました。彫刻に興味が薄かった私でも、佐藤忠良の「帽子・夏」が大変モダンで引き込まれました。

また、特徴的な展示館として、京都「楽焼」の作家である第15代樂吉左衛門館がありました。ここは、15代樂吉左衛門氏がプロデュースした「茶室」と「楽焼作品の展示室」で構成されていました。学芸員の説明を聞きながら、水面下にある「茶室」も訪問することができました。残念ながら写真撮影はできませんでしたが、利休にはじまる伝統の茶室流儀が、現代風の様式での茶室に生まれ変わっているのがとても印象的でした。巨大な石やこぼれ落ちる水滴の音と、心和むひと時を過ごすことができた30分間でした。この館のテーマは利休の「守・破・離」です。ちなみに「守・破・離」とは、基本を学び、そしてその殻を破り、師匠の元を離れるという、いわば現代にも通じる言葉です。

また、この日はタレントの「木梨憲武」展が開催されており、多くの家族連れで賑わっておりました。展示会初日とあって、本人も多くのスタッフをともない会場で笑顔を振りまいていました。私にとって、テレビで見る芸能人の姿に、あのような特徴的な絵というか、作品を作成できることが、まさにタレントなんですよね。展示物の変遷はあるものの、作風は「草間彌生」に似てきた感を受けました。

初日の夕食は、守山駅前で「近江牛」を堪能しました。ちなみに近江牛は薩摩で生まれた牛を近江で飼育しているとのことでした。          以上

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