老後の財産管理・継承方法 第4回目「家族信託」

社会福祉士 北村弘之

今回は、「家族信託」について説明いたします。(なお「家族信託」とは、一般社団法人 家族信託普及協会の登録商標です)

【1.家族信託とは】

資産を持つ人が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。いわば、「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」です。(一般社団法人 家族信託普及協会)

 【代表的なメリット】は2点挙げられます。

 【その1.柔軟な財産管理】

元気なうちから資産の管理・処分を託すことで、元気なうちは、本人の指示に基づく財産管理を、本人が判断能力を喪失した後は、本人の意向に沿った財産管理をスムーズに実行できます。加えて、積極的な資産運用・組替え(不動産の売却・買換・アパート建設等)も、受託者たる家族の責任と判断で可能となります。

 【その2:  2次相続継承可能】

遺言書では、2次相続以降の資産承継先は指定できませんが、家族信託では指定可能です。下図は、代表的な関係図です。

家族信託-図1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考)

信託には、営利目的のための「商事信託」と、営利目的をしない「民事信託」があります。信託法改正(2007年9月30日施行)により、一般の個人が扱えるものとして「家族信託® 」が財産継承の方法として現れました。(®一般社団法人 家族信託普及協会)

【家族信託でできるようになった代表的な相続を2例挙げます】

①認知症対策としての「家族信託」

これまでの財産管理では、判断能力が衰えたあと(認知症等)において、財産を柔軟(契約や借入等)に活用することが難しかったのですが、家族信託を行うことで活用が可能となりました。

②二次相続以降の承継者指定のための「家族信託」

これまでの資産継承では、二次相続以降の承継者を指定することはできませんでしたが、「家族信託」を利用することで二次相続以降の承継者を指定することが可能になりました。(遺言書では次の代迄のみ)

さて、一例目の場合です。

委託者(父)が所有するアパートを信託財産として、それぞれのアパートについて、受託者として、長男と長女にそれぞれ管理させることにより、委託者である父が認知症等により判断能力を喪失してしまった場合でも、アパートの契約更新や修繕のための外部業者との契約は可能となります。委託者の生前においては、父親はアパートの収益を受けられる受益者ともなれます。

但し 、信託財産となったアパートの所有権は受託者のものとなります。家族信託-図2

 

 

 

 

 

 

 

2例目です。二次相続以降の承継者を指定することが可能となりました。

 家族信託-図3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【信託財産の対象物と課題等】

■信託財産の対象物は金銭、有価証券、金銭債権、動産、土地およびその定着物、地上権、他

■課題として

 ①有識者相談窓口(弁護士、司法書士等)の少なさ、また、信託銀行の支店窓口では現状スムーズにいかない場合が多い

 ②口座名は、「委託者A 受託者B」または「受託者B信託口」といった名称に変更

 ③受託者の確保

  家族親族間での信認度、また事務能力、寿命、責任負担能力等が求められます

■費用の発生

 ・信託契約書までに至る専門家への報酬

 ・公証役場での手数料

 ・信託財産の登記料

 

(信託契約書のイメージ)

家族信託-図4