「没イチ」という言葉 

「没イチ」 (パートナーを亡くしてからの生き方)

 1/6/2019

北村社会福祉士事務所

代表 北村弘之

 私は社会福祉士の仕事の一つとして、後見人の受任をしております。その対象者11名(累計)は全員おひとり様で、親族とも疎遠な状態な人がほとんどです。このような対象者は日本の社会での核家族化と高齢社会で増加の一途をたどっており、すでに「成年後見」の家庭裁判所への申し立て(申請)件数は年に3万人以上の状態が続いています。多くの原因があると思いますが、その一つとして隣近所、そして職場での助け合いがあった共同社会が、残念ながら少なくなっていることも影響していると思われます。

 さて、私は昨年65歳を迎えました。いわば社会でいう「高齢者」の域に到達しました。このような話題は他人事のように話していましたが、自分に「高齢者」というレッテルが貼られると、何か真剣に考えるようになりました。子どもたちは二人とも家族を形成し他の地域で住んでおり、現在伴侶との二人暮らしです(プラス愛犬はいます)。しかし、いずれはどちらかが先に逝くことは自然の流れです。そんなことを考えていたところ、標題の「没イチ」という本が目に止まりました。著者は”墓守”とか”死生学”等を出版している小谷みどりさん(第一生命経済研究所)でした。私は、過去に彼女の本を何冊か読んでいましたが、本屋で手にとり読んでみると、なんと「ご主人を突然死」で亡くしていたことを初めて知りました。これがきっかけで、「没イチ」という本を書いたようです。没イチとは、配偶者が没し、一人になった人のことをいいます。面白いネーミングです。立教セカンドステージ大学での講師(小谷さん)と教え子(教え子と言っても60歳以上が大半のようです)の飲み会から派生した言葉のようです。この著書の中で、このように言っています。

 「配偶者に先立たれる悲しみや孤独、衝撃は防ぎようもありませんが、没イチになった後の生活をどうするか、どう孤独を防ぐかという対策は、いつからはじめても早すぎることはありません。配偶者だけが頼りという生活は、配偶者に先立たれるというリスクを考えると、危険といえます。普段から自立して生活力を身につけ、人間関係のネットワークをたくさん持っておくことが、没イチになった後のリスクヘッジとなるのです。」  (下線部分は北村)

 特に男性の方には推薦する本です。料理は奥さん任せ、同じく洗濯、掃除、そして衣服がどこにしまってあるのかわからない方はどうぞ。没イチの方の体験談記載もあり、上記の結論がどのような経過で、たどりついたかは一度本を読んでいただけたらと思います。                        以上

印刷される方は→ 「没イチ」 著 小谷みどり