社会福祉士 北村弘之
今回は、第3回目「任意後見」について説明いたします。
成年後見等と異なり、「判断能力」がある時点で契約するものです。現在、ご自分で判断することはできても、いずれ判断能力が衰えた時に対応する委任契約です。成年後見等は家庭裁判所への申し立てですが、これは公正証書で契約を締結します。詳細は下図を参照下さい。
【2.移行型契約】
任意後見契約には、3種類(将来型、即効型、移行型)ありますが、一般的には「移行型」が圧倒的です。これは将来の判断能力の低下に備えて、任意後見契約と同時に財産管理契約を締結するものです。いわゆる将来のことを見据えた契約の2本立てです。
【3.財産管理契約と任意後見契約の内容例】
「契約内容」には次のようなことを記載します。
(参考:「活用しよう任意後見」日本加除出版)
【4.この制度の対象となる人と代理権についてまとめました】
対象者は
・身寄りがない、または親族等が疎遠である人。
・お一人様で将来にわたって、介護や医療面、また財産等の管理で不都合が生ずる人。
【代理権 財産管理契約時】
・受任者が代理権を持つことで、公的書類の申請等が可能
・金融機関等での支払い等
・医療契約、介護契約の契約締結、支払い等
・他
【代理権 任意後見契約時】
・受任者が代理権を持つことで、不動産等の処分
・金融機関の預貯金の解約
・税金申告、納付
・医療契約、介護契約の契約締結、支払い等
・居住用不動産の購入・処分、借地借家契約の締結・変更・解除等
・他
【5.詐欺や悪徳商法への対処は難しい】
財産管理契約の本人(委任者)、また任意後見契約に移行した本人であっても、何ら行為能力(売買等)は制限されません。たとえ、意思能力がなかったとして契約の無効を証明することは容易ではありません。つまり、自分で守る必要があります。 (成年後見制度では、取消権や同意権があり防げます)
【詐 欺】
・要件を満たせば、だまされたものは誰でも民法96条の詐欺で取消権を行使できる。
・財産管理契約の中に、代理権を委任者に付与していれば、本人に代わって受任
者が取り消すことができる。
【悪徳商法】
・消費者契約法は、悪質な勧誘などによって契約した場合、消費者が取消すこと
ができるとある。
・財産管理契約の中に、代理権を委任者に付与していれば、本人に代わって
受任者が取り消すことができる。
【6.任意後見の時系列展開】
【7.現状の任意後見制度の課題】
一番の課題(下記3)は、判断能力の低下状態の判断です。低下した状態がどのような場合か、また急激に判断能力が低下した際に家庭裁判所に申し立てることができるかです。