高齢者の仲間入りを果たす

                              10/1/2018

                        北村社会福祉士事務所

                           代表 北村弘之

私は、セミナー等の講師において、参加者に「高齢者は何歳ですか?」と質問することがあります。正解は「65歳」です。法律的な定義はなく国連が決めたものらしいのです。しかし、参加者の多くの方は70歳、それとも75歳と答えております。やはり65歳で「高齢者」とは、現実の社会では違和感がありそうです。

昨年、日本老年学会は70歳からを「高齢者」と提案しました。それはよしとして、とうとう私にも、高齢者の証である「介護被保険証」と「年金請求書」がやってきました。後見人として仕事柄、介護保険証や年金通知をよく見ていましたが、自分の名前の入ったものを見て、ショックで一人で照れ笑いをしました。「そうか、高齢者の仲間入りか!!」

さて、小説家「内館牧子」氏の紹介です。以前、このコラムでもご紹介しました『終わった人』は、仕事一筋のエリート銀行マンが転籍先で定年を迎えたあとの居場所作りを表現した小説です。とある話では、著者の友人が自分をモデルにしたのではないかと尋ねてきたものらしいです。読んでみると本当に現役サラリーマンの将来において避けて通れない現実的な問いかけの話でした。悲哀とユーモアで描かれており、50歳代のサラリーマンには必読の小説です。

今回は、『すぐ死ぬんだから』という本の紹介です。これは、60歳代の男・女性に読んでいだたけるとおもしろい終活の内容です。主人公は78歳の妻。仲むつまじかった夫や、娘、息子夫婦、孫に囲まれ幸せな老後を送っていたはずだったが、突然夫が亡くなり、その遺書が出てきたことから大騒動に発展。その遺書には、愛人の名前が記してあり、家族は騒然とします。すでに40年前に愛人にこどもを作っていたという事実、それを何もなかったように40年間平穏に暮らし続けた夫の行動に妻は大ショックでした。妻や残された家族は猛反撃します。そしてついには愛人とその子供までを追及するのです。そのような中、同期会で会った友人の一人は認知症で施設に入り、もう一人は亡くなり、またもやショックに陥ります。そこで出てくるのです「もうすぐ死ぬんだから」という言葉。

作者は、「すぐ死ぬんだから」というセリフは高齢者にとって免罪符であると言っています。それを口にすれば、すべて楽な方へ流れても文句は言われない。「どうせトシなんだから」「今さらオシャレしても」。しかし、本当にそれでいいのかと問う物語です。

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